act.13 悪夢の終焉

「ところで、オルガノ・ハナダはどこにいるのでしょうか?」

「何重にもスネアーを掛けられ生体エネルギーを吸い取られていると思いますが、詳細は不明です」

 ラナの質問に奈緒が答える。

「まさか、オルガノ・ハナダの能力が逆に利用されているのでしょうか?」

「申し訳ありませんが詳細は不明です」

 ハナダ氏の能力とは……資料にも記載されていない噂レベルの話だと金森から説明を受けた。


 不死であると。


 不死とは大げさな表現ではあるが、肉体の損傷を無制限に修復する能力の事らしい。

 死なない。

 それはパラダイス・エンジン・システムに永遠にエネルギーを供給する事になる。貴重で有用なエネルギーコア。そのような恐ろしい目的の為捕えられているとは正に無慈悲で凄惨な状況であろう。


 さらに奥へ進むと、そこにはそびえ立つ大型のプラントがあった。

 時折電気火花を散らしながら不気味に光り輝く大型プラント。それこそが『パラダイス・エンジン・システム』であろう。これを破壊すればいい。しかし、その前に立ちはだかる一人の男がいた。

 上半身裸で素足。スラックスをはいている。筋骨隆々で全身に傷跡がある。忘れもしないその顔、オルガノ・ハナダその人だった。


 ハナダも日本刀を抜いていた。その日本刀を青眼に構え走って来る。ハナダの打ち下ろす剣を受け止めた。瞬間火花が散る。

「ハナダ。俺だ。ハーゲンだ。何をしている。目を覚ませ!」

 しかし、自分を見失っているのか、ハナダは連続して打ち込んできた。その斬撃を剣で受け止めながらも呼び掛ける。

「ハナダ。目を覚ませ」

 しかし、ハナダの目は光を失ったままで正気に戻る気配はない。

「ラナ。どこかにタイプHとトーマスがいるはず。探して」

 リオネの言葉に頷くラナ。彼女は背中のロケットを噴射し宙に浮きあがった。そして巨大プラントの周囲を旋回し始めたその瞬間、雷に撃たれ墜落した。プラントの反対側にタイプEがいたのだ。

 突っ込んでくるハナダに足払いをかけ転ばせるとタイプEのいると思われる場所へ走っていく。リオネと金森もついて来た。

 2.5mの巨大な玉子に斬撃を加える。タイプEは白い内容物をぶちまけて倒れた。その後ろに高さ80㎝くらいの黄色い箱がいた。タイプHだ。

「金森さん今よ」

 リオネと金森は黄色い箱に向かって射撃を始める。樹脂製の外板は容易く破壊され、中身の基盤などもバラバラになった。ハナダは「うがああああああ」と咆哮して倒れ動かなくなった。


 俺達が侵入してきた扉とは反対側の扉より一人の男が現れる。

 異界電力社長のトーマス・スマートフォンその人だ。


 奈緒は走ってトーマスの元へ向かう。

「奈緒、君はわかっているのかい。こんな敵対行為は許されないよ」

「分かっています。私はあなたと敵対している。でもあなたのやっている事は人類に対する、生命に対する敵対行為だわ」

 奈緒はポケットからワルサーPPKを取りだし引き金を引く。


 パンパンパンパンパンパンパンパン。


 鳴り響いた銃声は8発。

 そのうち6発は確実に命中していた。しかし、トーマスは笑っている。


「そんなもので私は殺せない。ふふふふふ」


 雷撃から復帰したラナがサブマシンガンで射撃する。リオネと金森も撃ち始めた。弾丸はトーマスの体に食い込んでいるのだが、しかし、奴の薄笑いは止められない。

 俺は日本刀で奴の心臓を突く。しかし、奴は平然と笑っている。

「痛いじゃないですか。不死身になったとはいえ、痛みは感じるんです。酷い方たちですね。あなた、ハーゲン少尉でしたね。その美しい毛並みにはあこがれますよ。是非、剥製にして部屋に飾りたいですねぇ。フフフ」


 不死身なのか。これは、ハナダの能力をコピーしたという事なのだろうか。

 ハナダとの打ち合いで刃こぼれしてしまった日本刀では長くは戦えない。どうすればいい。悩む俺にネーゼ様から精神会話が繋がる。

(ハーゲン。トーマスの弱点は脳です。脳内に肉体修復のスキルを司る部分があります。そこを破壊してしまえばもう肉体再生はできません。あなたの最大の霊力を込めた弾丸を眉間に撃ち込んで下さい)

(わかりました。ネーゼ様)

 ネーゼ様のアドバイスに従い俺は拳銃を抜く。ベレッタ92の撃鉄を起こし奴の眉間を狙う。

「拳銃では無理なのですよ。まだお分かりにならないのですか?」

 トーマスは薄笑いを浮かべながら近づいてくる。俺は自分の最大最強の霊力を弾丸に込め引き金を引いた。


 弾丸は奴の眉間に命中し、そして奴の頭部は跡形残らず四散した。

 首から上が無くなったトーマスはゆっくりと倒れた。


「オルガノ!起きて目を覚まして」

 ラナが一生懸命ハナダを揺すっている。ハナダはゆっくりと目を覚ました。

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