act.14 エピローグ

「お前は?ラナか?」

「ええそうです。ラナです。記憶が戻られましたね」

「ああ、思い出した。あ、お前は、ハーゲン、ハーゲン少尉だな」

「ハナダさん。お久しぶりです。あなたからいただいた情報で私の住む町は救われました。改めてお礼を言います。ありがとう」

「いや、そんなことは気にしなくていい。金森、金森じゃないか」

「社長、いや、元社長。お久しぶりです。貴方の救助の為、ハーゲンさんに協力を依頼しました」

「余計なことを……いや、余計ではないな。ハーゲン少尉でなければここは破壊できないだろう。乗ってきているんだろ。あの鋼鉄人形に」

「ええ、ここを破壊します。皆、外へ出ましょう」


 まだフラフラしているハナダを俺が支える。リオネ、ラナ、金森、奈緒の6人は速足で建物の外へ出る。そこにはゼクローザスに乗っているネーゼ様が待っていた。

「さあ、ぶっ飛ばしますよ」

 ネーゼ様がそう宣言した瞬間に人形は眩しい光に包まれた。その光は額に集中し、そこから強烈なビームが放たれる。巨大なプラントはその高熱により蒸発してしまった。周囲にも相当な輻射熱が浴びせられ何か所かで火災が発生している。プラントの有った場所は巨大なクレーターになっていて、その底の方では溶けた岩石が赤く輝いていた。俺達はネーゼ様のシールドで守られていた為、ダメージ等は無かった。

 空を覆っていた禍々しいオーロラは消失していた。『パラダイス・エンジン・システム』は完全に破壊されたのだ。


 俺達は最初にいた場所、異界電力ベイエリアに臨む海岸に戻っていた。

「ハーゲン少尉。今回は助かったよ。ありがとう」

「あんたに貰った剣だが、打ち合ったせいで刃こぼれしてしまった」

 そう言って剣を見せる。

「誰だこんな事をしたのは」

「オルガノ。貴方です」

 突っ込んだのはラナだった。

「記憶にないな。まあ、新しいのを送ってやる。助けてくれたお礼だ。3本くらい送るさ」

「一振りでいいよ」

「そう言うな」

「ところでラナとはどういう関係なんだ?」

「ああ、こいつはとある異世界の村で拾ってきたんだ。両親を亡くしたガキだったんだよ。カンパニーに連れてきたんだが、俺を助けるんだとか役に立つんだとか言いながらサイボーグ化に志願しやがった。他の食い詰めた連中と違って意識が高かったせいか自己を見失わなかったのだろう。よくできた子だ」

「なるほど。ところで、ラナのその恰好は?」

「オルガノの趣味です。イイ感じでしょ?」

「あ、ラナが良ければ最高なんじゃないかな……」

「そう、ラナが良ければ……」

 俺もリオネも固まってしまった。奈緒の反応も似ているので、俺達アルマ帝国の人間と同じような判断なのだろう。このロリ親父!!と殴ってやりたいところだが、当人が喜んでいるのならそれが一番だ。

「これからどうする?」

「会社に戻るよ」

 俺の言葉に笑いながら答えるハナダ。

「戻ったら危険じゃないのか?」

「大丈夫だ。それにな。ラナや金森、そしてそこのお嬢さん?」

「松本奈緒です」

「そう彼女、異界電力の人だろう。こいつらの身の保全を図るためにはそれが一番だ」

「なるほど」

「俺の目の黒いうちは好き勝手はさせんさ」

 ハナダの言葉に俺は頷く。

「ところで、お前さんのゼクローザスはあんな戦術核のような攻撃ができるのか?」

「いや、あれは乗っている人が特別製なんだ」

「姫様か」

「ああ」

 鋼鉄人形からネーゼ様が降りてきた。

「このまま日本で一週間くらい遊ばない?」

「ダメです。直ぐに帰投します。皇帝陛下には迷惑をかけられません」

「硬い事言うのね」

「当然です。もう左遷されるのは嫌ですからね」

 そこに金森が口を挟んできた。

「あの。申し訳ないのですが、転送ゲートの発生装置が破壊されましたので、再び準備できるのは一週間後になります。それまでは地球でごゆっくりなさってください」

「やったー」

 と両手を上げて喜んでいるのはネーゼ様である。

「ちょっとネーゼ様。私がいる事忘れないでくださいね」

「分かってるわよ。でも、ハーゲンは渡さないわ」

「いいえ、独占は禁止です。法律で決まっているんです」

 リオネの言っているのは何処の法律なのだろうか。どうでもいいが、この先一週間は気が休まるとは思えない。


 沖に軍艦が何隻も接近してきている。上空には戦闘機が旋回している。ヘリコプターが何機も飛び交い0番エリアに着陸していくのが見える。当局がやっと動き始めたのだろう。

 

 夏の日差しは熱く、しかし、潮風は心地よくその香りは懐かしいものだった。

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