act.8 昇天的雷撃 vs.E
二人の警備員は髪が焼け焦げ衣服も所々炭化していた。皮膚がほとんど重度のやけどを負っている。感電死のようだ。しかも、強力な電流を受けたに違いない。これと同時にゲートのセキュリティも破壊されたのだろう。電撃を使うサイボーグとはタイプE。
柱の向こうに気配を感じた俺は咄嗟に光剣を抜く。そこにいたのは全長2.5mの巨大な玉子、タイプEだった。
真っ白な卵型の体形に短く細い手と足が突き出ている。黒く丸い目が愛らしいのだが、人を確実に感電死させる強烈な電撃は要注意だ。
俺は走りながら奴の背後に回り込む。勿論、後ろを取れるとは思っていないのだが、これは自分に注意を引きつけ、ネーゼ様と金森から引き離す作戦だ。
約120度回ったところで奴は両手を前に突き出し、雷撃を放って来た。約3秒間の放電を光剣で受け取めたのだが、光剣のグリップが過熱し爆発してしまった。光の刃は霧散してしまい、俺はそれを投げ捨てる。
再充電までには時間がかかると踏んだ俺はすかさず奴に突進し、拳銃を抜き鉛玉をお見舞いする。しかし、弾丸は奴の柔らかいボディに吸収されてしまい、まるでダメージが与えられない。
打撃戦は不利。事前の情報でそれを知っていたのだが、こうなっては打撃戦で挑むしかない。奴が短い腕で殴りかかって来るのをかわし、強烈な回し蹴りをくらわせる。思いっきり霊力を込めた蹴りなので、400kg以上ある奴の巨体も吹っ飛んでいく。
コレで片がついてくれれば儲けものなのだが世の中そうまくはいかない。奴はぴょこんと起き上がりまた両手を突き出す。再度雷撃を放ってきた。
俺は弾の切れた拳銃を放り投げると、それに向かって雷撃は命中した。
奴は殴りかかって来るのだがそれをかわし脚を引っかける。見事に転んだ。俺は左肩に仕込んであるサバイバルナイフを引き抜き、奴の上に馬乗りになる。ナイフを突き立てると、意外にすんなり刃は通り30㎝程白く柔らかい表層を切り裂く。中からドロリとゲル状の液体が溢れてくるのだが、構わずそこに手榴弾を押し込む。口から手榴弾のピンを吐き出し距離を取ったところで奴がフラフラと立ち上がった。
手榴弾が炸裂し白い玉子は四散した。周囲にべちゃっとゲル状の白い液体がまき散らされる。細長いかかしのような骨格が残ったが、それも力なく倒れた。
「気持ち悪いわね」
ドロドロのゲルを見つめながらネーゼ様がつぶやく。
「しかし、全て単独行動しているな」
俺の言葉に金森が頷く。
「ゲームに参加して一般の人や異界電力の社員を虐殺する場合は、各々単独で行動しポイントを競うのです。その流れで命令されているのでしょう。我々としては幸運です」
なるほど、その通りだろう。ちょうどその時エレベーターが下りてきた。扉が開くものの中に人はいなかった。
「ちょうどいいわ。これに乗って上に行きましょう」
ネーゼ様はそのままエレベーターに乗ってしまった。俺と金森も後に続く。
「45階まではこのエレベーターで行けるようですね。そこからはエレベーターを乗り換えて50階へ行きます。そこが社長室です」
資料を見ながら金森が説明する。
「何か罠が仕掛けてないか注意しないといけないな」
「多分何もない」
「どうしてわかるんですか?」
俺の質問にネーゼ様が笑いながら答える。
「この建物の中からそういう悪意を感じないのよ。もうここには何もないと思うわ」
「そうなんですか?何もないんですか?」
金森が聞き返す。
「ええ、でも50階に行けば何か情報がある。それは確実じゃないかしら」
「何があるんでしょうか?」
「さあ。行けば分かると思いますよ」
エレベーターは45階に到着した。そこからさらにエレベーターを乗り換え最上階へと向かう。
俺達は50階へと到着した。
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