act.7 本社ビル侵入

 俺達は本社ビルの前に到着した。目の前に50階建てのビルがそびえ立っている。全面ガラス張りの豪奢な建物だ。周囲は樹木が多く植えられ、ちょっとした緑地公園になっていた。最上の50階に社長室がある事はわかっているのだが、それ以上の情報はない。

 これから先はビルの中に入ってハナダ氏を捜索することになる。


 俺はゼクローザスから飛び降りた。

「では皆で入りましょう。手分けして探す方が速いと思うのですが、バラバラになっては危険だと判断します」

 俺の言葉にリオネが渋る。

「そうね。でもあなた、ゼクローザスから離れて大丈夫なの?」

「俺は特に問題はないが」

「そうじゃなくて、ここに置きっぱなしにする気でしょ。無防備な状態で放置してどうするのよ。敵が来て破壊されたらどうするの?」

「その時は仕方がない」

「諦めてんじゃないわよ。私が乗っててあげる。これでも私、軍人なのですよ。人形の操作資格は持っています!!」

 両手を腰に当て自慢げに胸を張るリオネだが、その胸元は寂しい。

「ここはリオネさんにお任せしてはいかがかしら」

 俺はネーゼ様の言葉に頷きリオネを抱えてジャンプする。そして彼女を操縦席に乗せた。

「右のレバーが速射砲のトリガーだ。弾は徹甲弾で残弾は7。機銃の残弾は0だ。何かあったらそれをビルに打ち込め。合図になる」

「分かったわ。あんたみたいに上手じゃないけど任せて。サイボーグが来たらぶん殴って蹴っ飛ばしてやるんだから」

 心なしか浮かれているように見える。まあそうだろう。軍学校では演習用のオレンジネクサスしか運用しない。実戦用のインスパイアに乗れたとしてもそれは下位グレードの機体になる。ゼクローザスに乗る為には、指揮官に昇格するか、エリート部隊の帝都防衛騎士団に入隊するしかない。俺が左遷された時は特例でゼクローザスが配備された。通常はブルーネクサスかインスパイアが配備されるのだ。人形に興味がある人間なら、上位グレードのゼクローザス初体験は浮かれて当然なのだ。

 俺は再び地上に降りた。リオネは操縦席の扉を閉め右手を上げる。回れ右を2回して元に戻る。操縦できるんだぞとアピールしたかったようだ。


 俺達はビルの中へ入る。中は静まり返って誰もいない。

「おかしいな。誰もいない」

「そうね。生命の力、霊子がまるで感じられないわ」

 駅にある自動改札のようなゲートがある。そこを通らなければ中に入れない仕組みになっているのだが、何故か稼働していないようだった。

「セキュリティが死んでいますね。何があったのかな?」

 金森が怪訝そうに首をかしげるのだが、理由はわからないようだ。

 ホールの中央に巨大な柱が立っており、その前に受け付け用のデスクが据えてある。そこには警備員らしき男の死体が二人分転がっていた。

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