act.6 ESPキャンセラー vs.M
その、鏡でできたポリゴン人形は右手に抱えた重機関銃を射撃してきた。20㎜級の機関砲はゼクローザスの装甲は貫けないものの、炸裂弾の弾頭は着弾と同時に爆発し火を噴く。こちらも機銃で応戦するがすぐに弾丸が尽きてしまった。
今、約50mでにらみ合っている。奴の特殊能力は『ESPキャンセラー』である。魔術や超能力といった霊力を元にした攻撃を全く受け付けないボディである。それだけなら鋼鉄人形で殴ってしまえばお終いだ。しかし、それだけではなかった。その有効範囲を任意に広げることができるのだ。資料では最大半径30mであった。
その能力が鋼鉄人形に対して本当に効くのか。ネーゼ様の強大な霊力を無効化できるのか。無謀な挑戦はすべきではないと理性は判断する。しかし、このままにらみ合っていては前に進めない。
俺は一つ賭けに出ることにした。最大速度で突っ込み体当りをかます。奴が能力を解放しなければそれで終わり。解放しても人形が動くなら同様。しかし、人形が停止したら降りて戦うしかない。霊力の使えない状況で、ネーゼ様のサポートも期待できない。危険な賭けだがこれしか道はないと考えた。
俺は盾を構え奴に向かって突進していく。奴の頭部が開き中から直径が30㎝もある大きいクリスタルが顔を出す。それは強い閃光を放った。その瞬間人形の動きは止まり。操縦席内の計器類やパネルも光を失った。
想定内とは言え、こんな所で停止させられるとは恥辱である。俺は手動で操縦席の扉を開き外へ飛び降りた。胸のホルスターから小型拳銃を抜き、その光り輝くクリスタルを撃つ。やはり打ち抜けなかったが、奴はクリスタルへの攻撃を嫌い頭部のパネルを閉じる。その時既に光剣の間合いに入っていた。奴は左腕から剣を出し斬りかかって来るがもう遅い。宇宙軍用装備の光剣から伸びた光の刃は奴の両手を切り落とし胴体を両断した。念のために頭部も切り落とし例のクリスタルも両断した。
「ハーゲンさん大丈夫ですか?」
息を切らしながら金森が走って来る。
「ああ大丈夫だ」
「お見事です。タイプMの弱点はESPキャンセラーを拡張した場合なのです。動きが止まり、他の攻撃ができません。敵の弱点を突くすばらしい戦いぶりでした」
「運が良かったんだよ。ここでさっきのタイプDに襲われたら勝てたかどうかわからない」
そう、運が良かった。アルファベットシリーズのサイボーグは個別に行動していたのだ。
「これからどこに向かう?」
俺の質問に金森は首を振る。
「電子装備は全て破壊されました。地図も何も使えません。ハナダ氏が捉えられているのは左側にある本社ビルか右側にある発電プラントになります」
「行ってみるしかないわね。本社ビルから見てみましょう。恐らくビル内に入ればハナダ氏のいる場所を霊査出来ると思います」
「そこにハナダさんが居なかったらどうするのよ」
リオネの言葉にネーゼ様が頷く。
「もちろんそれでいいわ。先に発電プラントの方に行ってハナダ氏がいなかった場合が困るの」
「あ、なるほど。あそこ破壊したらここ全体がどうにかなってしまうかもしれない。だからあそこは一番最後だよね」
「そう。金森さん、本社ビルへ案内して」
「分りました。ハーゲンさん。進みましょう」
俺は頷きゼクローザスの操縦席に戻る。機能は停止していたが、すぐに再起動できた。俺が戦闘に立ち、3人は徒歩でついてくる。
正面に「異界電力」の本社ビルが見えてきた。
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