act.10 破壊神のキッス vs.K
俺達は地下の駐車場へ直通のエレベーターに乗せてもらう。そこに止めてある黒塗りのベンツに乗った。奈緒が運転している。
地下駐車場から地上に出て玄関前に停止した。
俺達の姿を見たリオネは操縦席の扉を開け手を振っている。備え付けのワイヤーリフトを使って下に降りてきた。ちなみに俺はジャンプするのでこのリフトは使わない。
「何もなかったわよ」
「そのようだな」
「あ、良いモノ持ってるじゃないの。貸しなさいよ」
と、俺の持っていたMP5を奪い取る。コッキングレバーを引いたり弾倉を外したり色々いじくっている。
「わかった。使いやすそうね。これ頂戴」
とにこやかに笑う。
「拳銃はいらないのか?」
「これでいいわ。拳銃なんてどんだけ撃っても当たらないんだから。あ、金森さんもイイの持ってるね、見せて」
と、今度は金森の持っていたM16を取り上げる。
「ふむふむ。これは小口径高速弾ね。意外と命中率良いみたいよ。金森さん構えて」
「え?こうですか」
「そうそう、それで照星と照門を重ねて、こことここね。で引き金を引くと当たるわ。セミオートで一発づつ撃つと良いと思う」
「そうですか」
「2時間くらい練習したらうまく当たるようになるわ」
「2時間も練習してる時間はないですね。ところでリオネさんは射撃は得意なんですか?」
「勿論。ライフルの扱いならハーゲンより上手いわよ」
金森が俺の方を向く。俺は頷いてやった。リオネは本当にライフルの扱いは上手い。
「そろそろ行きましょう」
ネーゼ様の一言に皆が頷く。
俺はゼクローザスの操縦席に飛び乗った。
俺達がいるのは異界電力本社ビルの玄関側、そこは本州に向いていて北側になる。発電プラントは本社ビルから見て南側にある。本社ビルを左側に見ながら通りを左折すると正面に巨大な発電プラントが見えてきた。さらに進み本社ビルを通り過ぎたあたりで巨大な物体を発見した。そいつは東側から発電プラントに迫ってきていたので今まで気付かなかった。
大きい。
黄金色の装甲に守られた巨体は身長が100m以上ありそうだった。西洋の甲冑のような人型の超大型ロボットだ。
資料には目を通していたのだが、実際に見るとその大きさが際立っている。異世界転生技術を応用した局部的な重力制御を利用しているのだという。重力制御無しであの巨体を二足歩行させるのは無理があるようだ。
東側の門とその周辺を破壊していたタイプKはこちらに気付き、攻撃目標を切り替えた。周囲に巻き上げた瓦礫をまといながら、こちらに突進してきた。背中からミサイルが2発発射された。大型の巡航ミサイルは直線的な翼を開くとそのままこちらに向かって飛翔してくる。47㎜速射砲を連射して2発共撃墜した。ここで速射砲の弾も無くなった。
一行の乗っていた黒塗りのベンツはバックしてビルの陰に退避している。俺はそれを確認した後、奴に向かって走り始めた。胸の装甲が開き連装の砲が顔を出す。その連装砲が火を噴いた。滑腔砲から発射された砲弾は装弾筒を分離して飛翔してきた。タングステンの弾体が盾に突き刺さる。霊力を込めたゼクローザスの盾でなければ貫通されていただろう。さらに左手に仕込まれていた大口径の機関砲が火を噴いた。俺はさらに接近してそれをかわす。光剣を抜き奴の脚に斬りつけながら股をくぐり背中側に回る。10倍のサイズ相手に切りつけても黄金の装甲に傷をつけるだけで致命傷を与えることはできない。
その時、ネーゼ様より精神会話が繋がった。
「ハーゲン。タイプKの弱点は重力制御装置です。概ねお腹の中心、おへそのあたりにあります。そこを破壊して」
「了解」
奴は振り向き左手の機関砲を撃ちながら右脚で蹴りを入れてきた。盾で防ぐものの俺は吹き飛ばされる。本社ビルの横にある森の中に倒れてしまった。
タイプKは巨大な陸上要塞として設計されている。重力制御によりペイロードを無視して兵装が積み込めるのだ。つまり、重力制御を崩してしまえばその強大な重量で自ら潰れてしまう。
しかし、その巨体故、へその部分と言えども地上50m以上の高さにある。ここは奥の手を使うしかない。
「ネーゼ様。申しわけありませんが10秒ほど防御をお願いします」
「分かったわ」
俺は光剣を仕舞い盾を構える。ネーゼ様が人形の周りにシールドを展開してくれた。奴の放つ砲弾は全てシールドに阻まれ空中に停止した。
俺は意識を集中する。ゼクローザスの全身が光り始めそれは次第に額部分に集中する。奴のへそ、体の中心に照準を合わせ霊子ビームを放った。
奴の腹の部分に大穴が空いた。直径は約3m程だ。その巨体に比べれば小さい穴かもしれないが、狙い通り重力制御装置を破壊した。まず脚部の関節が全て潰れ、股関節部分も潰れた。バラバラになった脚部の上に胴体が落ちてくるが、その胴体も重量に耐えきれず二つに折れた。燃料に引火したのか燃え上がり始め、そして爆発した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます