act.3 奇襲 vs.A

 可能な限り追加装備を装着している。いつもは大剣と盾のみだが、今回は左手に76.2㎜速射砲、装弾数25発、弾種は粘着榴弾HESH、右手に120㎜滑腔砲かっこうほう、装弾数7、弾種はAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)、右胸部に47㎜速射砲、装弾数15、弾種は徹甲弾AP、左肩上部に120㎜ロケットランチャ―、弾種は成型炸薬弾HEAT、装弾数6。右肩内部に12.7㎜連装機銃、弾種は徹甲焼夷弾HEIAP、で装弾数は各200発。背中に大剣と盾、左側の腰に短剣、右の腰には宇宙軍戦闘人形用の光剣だ。

 もちろん、訓練でもこんな重装備をしたことは無く、実際初体験みたいなものだ。火器の照準はそれぞれ独自に機能するが、同時に発射できるのは左右一種類ずつ。金森氏の資料より、サイボーグの中に化け物がいる事が分かり、また、同時多発的な襲撃が予想されるための配慮だ。

 

 異界電力ベイエリアの配置は以下のようになっている。


     陸地 ↑北

   ―――――――――

 陸|  4 3 2  |陸

 地|  5 0 1  |地

☆/   8 7 6   \

      太平洋

    

 北側が本州、陸地である。とある湾内に建設されており、それぞれが一辺2㎞の正方形。埋め立て地である。各エリアの間は30m程で海で隔てられている。本州につながる橋があるのは1番~5番エリアまで。ただし距離は3㎞ある。隣り合わせのエリアには橋が架かっている。目標の「異界電力」があるのは0番エリア。俺たちが今いるのは5番エリアへ橋が架かっている場所よりも数キロ南西側の地点(地図上の☆印)だ。つまり8番エリアが最短距離になる。


 ゲームのルールは簡単だ。

 開始と同時に本州側との橋梁が爆破され、異界電力ベイエリアは孤立する。同時に、p.w.カンパニーのサイボーグ兵器が各エリアに突入し、そこにいる人間を虐殺する。人間の職業により加点され、最高得点を挙げたサイボーグ兵器を予想するゲームだ。p.w.カンパニーの目的は「異界電力」を潰すことと、元p.w.カンパニー社長のオルガノ・ハナダを確保する事。俺の目的は異界電力の発電プラント『パラダイス・エンジン・システム』を破壊し、p.w.カンパニーよりも先にハナダ氏を確保する事だ。要するにp.w.カンパニーのサイボーグと鉢合わせになった場合は、容赦なく戦闘に突入する。

 

「ハーゲン。あなた、あそこまでどうしていくつもりなの??」

「ジャンプするには遠すぎる。テレポートを使うと霊力が尽きてしまう可能性がある。2回は使えない。使うなら脱出する時だ」

「だからどうするの?」

 しつこく聞いてくるネーゼ様である。

「海の底を歩いていくさ。その程度なら酸素も持つだろう」

「馬鹿ね。私が飛ばしてあげるわよ。その代わり、操縦席に乗せて♡」

 戦闘を控えていなければ願ってもない申し出なのだが、やはり彼女を乗せるのは苦しいだろう。

「ネーゼ様のようなたっぷんたっぷんのおっぱいは、あそこに入る余地はありません。私のようなスリム体形なればこそ同乗が可能です。ハーゲン。私を乗せて♡」

 もっともらしいことを言うリオネであるが、お前は第一皇女に向かって不遜すぎるのだ。後々どんな処分を喰らっても俺は知らない。

「私はここからサポートをします。ドローン、およびサイボーグからの映像を解析できますので的確な指示が出せると思います」

 冷静な金森である。その時、パパパパと破裂音が響いた。

 銃撃だ。銃弾はネーゼ様のシールドに阻まれて空中で停止している。

 銃撃してきた方向を見ると、赤い合金製の装甲をまとったサイボーグが3体いた。

「タイプA。何故ここに。ここは戦闘エリア外のはずだ」

 金森は驚きを隠せないようで狼狽している。

 距離は約500m、俺は左手の速射砲を放った。一体に命中し、そいつは四散したが残りの2体はそのまま突っ込んできた。奴らは緑色の粘液を体中に分泌し全身を覆う。何か毒液か強酸性の液体だろう。背中の斧を取り出し斬りかかって来る。砲を撃つには距離が近すぎる為、右肩の機銃を撃つ。しかし、粘性の高い液体に阻まれ致命傷が与えられない。俺はその2体を蹴り飛ばし、空中で速射砲を浴びせ破壊した。

 ゼクローザスの右足からは煙が出ており、酸に犯されたのか一部が腐食していた。

「まあ、ゼクローザスの装甲を溶かすなんて、生意気な薬品ね」

 リオネはペンで腐食部分をつつきながらぼやいている。そのペンも溶けてしまう。

「信じられません。ここはエリア外のハズ。しかもp.w.カンパニーの社員である私が襲われるなんて……」

 金森は両ひざをつきうなだれている。

「金森さん。どうする。このままだと反逆者として処分されるんじゃないかな?」

 俺の言葉に頷きながら金森は立ち上がる。

「そうですね。反逆者かもしれません。でも、私はやり遂げたい」

「一蓮托生だな。ネーゼ様。ここで分かれるのは得策じゃない。ゼクローザスとその4WD車を一緒に飛ばしてもらえますか。そう、比較的広く橋梁を一つ突破すれば0番エリアへ行ける5番エリアがいいでしょう」

「分かったわ」

 ネーゼ様が頷く。彼女の霊力で俺たちは光に包まれた。

 次の瞬間、俺達は異界電力ベイエリアの中の5番エリアに移動していた。ネーゼ様の能力「テレポート」だ。

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