クエスト『ピクシアスの花採集』2

 痛みは判断力を容赦なく奪う。蛇の攻撃を避けつつオークに攻撃を仕掛けるが、前に出すぎて危うく当たりそうになる。切り抜ける方法も痛みのせいで浮かばない。


「くそっ……」


 剣に魔法を付与し続けるにも魔力を必要とする。それとは別にオークに向けても魔法を発動しているので魔力が危うい。


 初めてだな……


 魔力が切れると体に力が入らなくなるとは聞いていたが、今まで追い詰められる事がなかったので心配もしていなかった。


「花さえ取れれば……」


 別に倒さなくても良いと分かってはいる。でも一人だと否応なしに俺が狙われる。


 何か無いか……


 敵の攻撃のペースが早くなっているように感じる。避けるのもそろそろ限界に近い。

 さっきから火の魔法も連続で使っているので氷が溶けて水滴が体に当たり寒くなってきた。


「……氷?」


 そういえばここは洞窟内だったと思い立って上を見ると、鋭利な武器が沢山生えている。


「大きさも十分だな」


 天井までかなりの高さはあるが問題ない。大きさもあるし、幸い敵も大きくて当てやすい。



 まずは蛇から仕留めることにした。攻撃力はそんなに無いが素早いので、オークを先に誘導すると攻撃を受ける可能性がある。


「体が長いことを呪うんだな!」


 適当に天井へ炎の矢を飛ばして氷柱を落とす。沢山生えている部分に蛇を誘導したが、出来上がった蛇の串刺しは少し気分が悪くなるほど穴だらけになった。


「残るはお前だけだ」


 蛇が殺られたことで怒っているのか、オークは大きな咆哮を放ちながら突進してくる。

 意外と早いことに驚きつつ氷柱を落とすが全く当たらない。


「嘘だろ――」


 このままじゃ魔力が尽きる――


「仕方ない、今はリリを優先しないと」


 悔しいが仕返しより花だ。これを持ち帰ればリリは元気になる。


 剣の魔法を解除して、一度深呼吸をする。その後両足に強化魔法を掛けて地面を蹴る。

 何度か転びそうになりながら花を根元から引き抜いてアイテムボックスに放り込み、入口を目指す。

 オークの姿が見えなくなるのと同時に別のモンスターが攻撃してくるが、あの二体から比べたら避けたり攻撃することも問題は無かった。




 ミネル王国に戻る頃には夜になっていた。診療所に入ると傷だらけ過ぎて先生に驚かれたが、早くリリを助けてくださいと花を渡して病室を後にした。


 待合室の椅子に腰掛けると、急に体が重くなるのを感じる。

 きっと魔力不足と緊張が解けたからだろう……


 今日は良い夢が見れそうな予感がする。起きる頃にはきっとリリも元気になっているだろうと思いながら、目を閉じた。

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