クエスト 『ピクシアスの花採取』

 洞窟や建物は、外と違い動きが制限される。剣を振ったり魔法を使うときも、注意が必要だ。


「やっぱり中も寒いなぁ」


 外より洞窟の中は暖かいだろうと思っていたけど、そうでもない。

 それにかなり強い魔物がいる気もする。



 剣を抜いて火の魔法を付与すると、刀身に火の渦が巻き付く。



「時間もないし、一気にいくか――」



 奥に進むほど魔物の数は劇的に多くなる。が、ここに生息する魔物は熱いのが苦手なようで、一撃で倒すこができる。



「これなら――」


 今日中に帰れる――と思いたかった。


 だけどそんなに甘くない。太くて長い蛇とオークが行く手を阻む。


 診療所の先生が無理なら引き返せと言っていた理由はこのことだろう。


「早く帰りたいのになぁ」


 リリに早く花を届けないと……


 少しイライラしながら剣を構える。


 オークと蛇は、意外と相性がいいようだ。オークの大きい攻撃と、その隙を埋める蛇の魔法攻撃。


「確かにこれは少しキツいかも」


 魔法で身体強化をしながら、土魔法で壁を作って魔法をガードする。

 たまに色々な属性の魔法で矢を形成して飛ばすが中々当たらない。

 オークは攻撃が大きいから避けやすいけど、当たれば一撃だろう。ただ近付くと蛇が攻撃方法を魔法から物理に変える。そのため剣での攻撃が中々出来ない。


「それなら――」


 土魔法でオークと蛇の間に壁を作る。一瞬オークが怯んだ所を狙って近くから両目に向けて矢を放つ。


「いったか――」


 後一歩届かず腕に刺さる。ダメージはないようだ。

 手応えはあった気がしたのに……


「くそっ」


 イライラしつつもう一度矢を形成しようとして、自分が空中に浮いていることに気が付いた。


「な――」


 気が付いたと同時に体に痛みが走る。

 いつの間にか蛇が後ろに移動していたようだ。


「ぐはっ……」


 蛇に飛ばされた勢いのまま石壁に当り、肺から空気が無理矢理ぬける。

 吸っているはずなのに肺に息が入らない。



 ヤバイな……この状況……


 目の前が霞んでくる。


「リリ……」


 花を届けないと……


 飛びそうな意識を何とか保つ。



 震える足に鞭を打ちながら、もう一度剣を構えた。

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