滞在三日目 風邪

 地上にも冬がゆっくりと近づいてきた。川は端から少しずつ氷が出来始め、子供達は真っ白な景色に心踊らせる。




「リリ、朝だよ」


 いつの間にか同じベットに潜り込んで寝ていたリリを起こそうとするが、起きる気配が全くない。


 今朝は結構冷えたみたいだけど、同じベットで寝ていたので寒さは余り感じなかった。

 それどころか、いつもより暖かくも感じる。


「リリ?」


 気になって毛布のなかを覗くと、リリが体を丸めて小刻みに息をしていた。


「リリ!!」


 顔は真っ赤になっていて、頭をさわると熱いぐらいだ。風邪にしては体温が高すぎるようにも感じる。



 フロントに急いで向かい、近くに医者がいないか聞くと、冒険者ギルドの近くに診療所があると聞いたので、リリを抱き抱え急いで診療所に向かう。


「もう少しの辛抱だからね」


 小さな手が弱々しく服を掴み小さく頷く。昨日はあんなに元気だったのに……




「少し厄介な風邪ですね」


 診断の結果は風邪とのことだった。医者曰く、この地方で冬の始めに蔓延する風邪らしい。


「それで、その薬は?」


「すまんな、ちょうど材料を切らしてしまって……」


「そんな……」


 リリの他にも何人か同じ病気で薬を出してしまったらしい。

 薬はここから北に少し行った所にある、洞窟最深部に咲く『ピクシアスの花』を煎じて作るらしい。


「花さえ手に入れば薬は直ぐに作れるんじゃがなぁ」


「なら、僕が行ってきます!!」


「お前さん一人でか?」


「はい」


「パーティを組んだ方が……」


 そんな悠長にしていられない。ベットに横たわり苦しそうに息をするリリを早く助けたい。


「決して無理はするなよ、無理だと思ったら引き返すんだ」


「分かりました」




「少し待っててね」


 リリは少し落ち着いたのか、また寝始めたようだ。


 簡単な装備の確認をして、北の洞窟に向かった。《ルビを入力…》

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