移動中

紅葉

 山を降りると、登る時とは違って木々が鮮やかに色付き始めていた。


「季節が逆に進んでる見たいね 」


「確かに」


 葉が緑の頃に登ったから、何だか変な感じがする。


「この辺りでお昼にしない?」


「そうだね」


 切り株に腰をおろして、パンと干し肉を出す。料理をしても良いけど、今は何だか気分が乗らない。


「ありがとう」


 リリに半分渡してパンにかぶりつく。焼きたてのパンはふわふわで美味しいけど、何だか味気ない。


「後何日くらいで町に着くの?」


「三日位かな」


「そう」


 紅葉が綺麗だ。けど疲れすぎて今は楽しめない。


「今日は此処で野宿しよう」


「まだ昼よ?」


「まあまあ、別に急いでる旅じゃないしたまには良いじゃん」


「そうね」


 そうと決まれば、まずは拠点の作成だ。木が真上に無いところにテントを建てる。虫は嫌いだ。


「テント出来たよ」


「ありがとう」


 リリは切り株に座って本を読んでいる。


「紅茶でも淹れようか?」


「大丈夫」


「そう、じゃあ僕は少し周りを散策してくるね」


「行ってらっしゃい」



 拠点の周りは何処までも黄色や赤の絨毯が敷いてある。落葉を集めて焼き芋したいな……

 見たことしかないので実際にやってみたいけど、芋がない……

 魔物の気配も無いので今夜は安全かな。

 一応魔物よけの魔法を周りに張る。


 拠点に戻って火を起こす。自然の燃料が沢山あるから有難い。

 枯れて落ちた枝を火に投入しながら空を仰ぐ。真っ青な空に小さな雲が散りばめられている。


「良い天気だ」


「本当ね」


 リリがいつの間にか本を閉じて隣まで来ていた。


「本はもういいの?」


「きりがいいから、中断中」


「そっか」


 隣に腰をおろすと、寄りかかってきた。


「どうかした?」


「もふもふ」


「しょうがないなぁ」


 仰向けに寝ると、リリは腹の上に登って眠り始めた。

 リリ曰く、もふもふで暖かいらしい。

 アイテムボックスから毛布を出してそっとリリにかける。


「暖かい」


「少し寝たら、夕飯一緒に作ろう」


「うん……」


 リリは直ぐに寝息をたて始めた。この状態だと此方も動けないので、リリの頭を撫でながら夕飯の献立を考える。だけど浮かぶ前に睡魔に襲われた。

 焚き火の暖かい風とリリの体温は抜群に眠くなる。

 歩き疲れも相まって、目を瞑ると直ぐに眠れた。

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