一人の寂しさ
ジジが狩りに出掛けると、部屋が静かに感じる。いつも騒がしい訳じゃないけど、何かが欠けた感じだ。最近買った本を読もうとしても、内容が全く頭に入らない。
「外に出よう……」
部屋にいても落ち着かないので、出掛けることにした。なるべく目立たないように黒いマントを頭から深々とかぶり外に出ると、雪が降っていた。部屋に引き返したい気持ちを何とか押さえつつ一歩を踏み出した。
「なんかつまんない……」
外には出たものの、辺りの出店を物色しても気になる物はなかった。
「寒い……」
小さな声が白い息に変わって空に消える。
一人が寂しいと感じたのは久しぶりだ。一緒に狩りに行こうと誘われたけど、断ったのは自分だ。少し後悔している……
寒いので取り敢えず店に入ることにした。小さな武器屋は、向かいに大きな武器屋があるせいか人が少ない。でも値段が安く品物は良さそうだ。
壁に掛かっている剣を見るが、絶対扱えないと思う。重そうだ。隣にある槍や斧なんかもジジなら扱えそうだけど私は無理だろう。
ナイフのコーナーには色々な鉱石で作ったナイフや小物が置いてあるが、今使ってる黒曜石のナイフは、護身用に持っているだけで使ってないので買わなくても良いか……
それからもしばらく店の中をまわったけど、結局なにも買わずに店を後にした。
外はちょうどお昼時で飲食店関連は何処も行列が出来ていたが、一人で並ぶ気力も無いので帰ることにした。
旅館に戻り、部屋の戸を開けると薪ストーブの暖かい風が出迎えた。もう少ししたらジジも帰ってくるだろう。それまで少し寝よう。久しぶりの一人歩きは妙に疲れた。
前までの自分とは何か変わりつつあるんだと実感しつつ、眠りについた。
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