滞在二日目 料理

 昼を告げる鐘の音が響く。


「やっと起きたわね」


 目覚めると、リリがやれやれという顔をしながらこっちを見ていた。


「何だか気持ちよくて……」


 申し訳なさそうな顔をすると、リリがクスリと笑う。まさかリリが起きてるとは。


「お腹が空いたわ」


「了解、少し待ってて」


 朝作ったハンバーグをアイテムボックスから出す。


「いつ作ったの?」


「秘密。どうぞお召し上がりください」


 ハンバーグ、気に入ってくれると良いな。

 ナイフとフォークを渡すと、さっそくハンバーグに切り込みを入れた。


「凄い肉汁!!」


 嬉しそうに声をあげる。確かに肉の断面から肉汁が滝のように溢れ出るし、時間経過がないおかげで熱々だ。よだれが止まらない。


 リリの喜ぶ顔を見ながらハンバーグを口に入れると、噛むほどに肉汁が溢れ出る。それがソースと混ざって、何とも言えない美味しさが口に広がる。


「美味しい」


「それは良かった」


 リリも気に入ってくれたみたいだ。そういえば、リリの嫌いなものを知らないな……


「ここの料理も美味しいけど、一番はやっぱりジジの料理ね」


「誉めてもなにもでないよ?」


「それは残念ね。お代わりに期待したのに」


「また作るよ」


「約束よ!」


 小さな約束をした。本当に気に入ったものは、また作ってとリリは言う。

 美味しくできたし、次はメンチカツも挑戦だなと思った。



 食事を済ませて部屋を出ると、外は人で賑わっていた。


「今日は何処に行くの?」


「今日は冒険者ギルドに行こうと思う」


「そう……」


 リリは少し嫌そうだ。まぁ人嫌いだからしょうがないか。


「大丈夫、僕が付いてるから安心して」


 リリの手を強引に引いて人混みに混ざった。



 ギルドで主の情報はなかった。まぁ分かっていたことだけど……


「駄目だった」


「そう……」


「まぁ、そのうち会えるさ」


「前向きね」


「そうかな? さて、夕飯のリクエストはあるかい?」


 そろそろ夕飯の時間、結構歩いてお腹が空いてきた。だけど食べたいものが全く浮かばなかった。

 昨日のお店でも良いけど、冒険したい気持ちもある。


「じゃあ、今晩は私が作るわ」


 ……?


「いや、リクエスト……」


「大丈夫、任せて」


 リリの笑顔を見ると、「うん」としか言えなかった。料理をする所を見たことがないけど大丈夫かな。


「それじゃぁ、買い物行くわよ」


 止めた方が良いのかな?

 嬉しい筈なのに、なんか不安だ。


「楽しみだな……」


 不安な声が町の喧騒に飲み込まれた。



「本当に気に入ったんだね」


 買い物中にリリはハンバーグを作ると言った。それを聞いて急いで調理器具を洗うことになった。

 帰ってくるなり作る気満々のリリを見ると、何だか微笑ましい。


「ジジより美味しく作るわ」


「楽しみにしてる」


 作り方を教えながら、種を少しもらった。アレに挑戦してみるかな。


 分けてもらった種を楕円形に整形して、卵、パン粉の順番で作ったものを油へ投入。きつね色になるまでたまに転がしながら油のなかで泳がせる。


「それは何を作ってるの?」


「メンチカツだよ。主がよく作ってた奴なんだ。冷凍してよく保存してたんだ」


「美味しそうね」


「外はさくさくで中がジューシーな……」


 うん、もう聞いてないね。


 いつの間にか最初に揚げた物を強奪された。


「美味しい」


 どうやら気に入ってくれたようで良かった。



「さて、夕飯にしようか」


「ハンバーグ、どうかしら?」


 ナイフを入れると、肉汁が溢れ出す。味も文句なしだ。


「美味しい、これは絶品だ」


「ありがとう、こっちも美味しいわよ」


 メンチカツも上手く出来た。宣言通り外はさくさく中ジューシーに仕上がって、手が止まらない。


「幸せだ」


「そうね」


 リリと肉を沢山仕入れることで一致した。

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