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 もともと女性の洋服を着る為に色々詰めたり締めたりと努力していたヒカル。メイクだっていつだって手を抜いたりしないで頑張っていたしそれに、女性になることを切に願っていたことも知っている。ヒカルが十八でこの世界に来た時から。

「そっか、おめでとう」

「ふふ、ありがとうございます」

 こういう時に掛ける言葉は「おめでとう」でいいのか正解は分からないけれど、多分きっとそれで合っている。だってある意味生まれ変わったのと同じだと思うから。

「ママにはさっき挨拶をしてきました。泣いて喜んでくれて」

「そっかそっか、でもまぁ泣くわな。ヒカルがこんなに立派になって」

「どこ見て言ってるんですか」

 ちょっとやめて、そう言う意味で言ったんじゃないから。

「いやでも本当におめでとう。良く頑張ったね」

 手術に伴う痛みはすさまじいと良く聞くし、俺だったら絶対に出来ないって思っているから。凄いよ、本当に。

「自分がしたいって思った事ですからね。正直本当にめちゃくちゃ、この世の終わりが来たんじゃないかって思ったくらい痛かったですけど、今は嬉しいです。両親も笑ってくれたし」

「そっか、良かったな」

「はい。私が“女性”を選んだ時、両親はとても苦しそうな顔をしていたから」

 性同一性障害と言う言葉が一般化してきたけれど、実は性転換手術をする人はみんながみんなそうじゃない。ヒカルのように両方の気持ちを持っていて、それでも異性の身体を選ぶ人だっている。

「ヒカルの人生なんだから、ヒカルが選んで生きなさいって言ってくれて、決心が持てましたから。これからも私らしく最高に生きていきたいです」

「ヒカルなら大丈夫」

「どうして?」

「ミケがそうやって育てたから」

 いつも愛嬌を持って少し図々しく、自分らしく楽しく生きる、がミケのモットーだから。

「ふふふ、確かに。だからちょっと図々しくなったのかな」

「どこが?」

「来世はまた男が良いって思っているから」

 おや、それは意外。

「だって男の時代も楽しかったのはうそじゃないし、女性みたいに色々頑張らなくてもいいから。この人生は両方味わえたから、今度は男の人生を全うするのも楽しそうだって思って」

「あー、全くミケに良く似たね」

 ヒカルはくしゃりとした笑顔を見せて言った。

「褒め言葉です」


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