また逢う日まで

カゲトモ

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 昨日まではあんなにどしゃ降りだったのに、今夜は雲一つない晴天だ。三日月が空に浮かんで星たちがキラキラと輝いていた。

 これが昨日だったなら良かったのに。天の川が主役を張れる日には晴れないなんてちょっと残念。

 いや、もしかして年にたった一度の大切な逢瀬を誰にも邪魔されたくなかった、とか? それならロマンがあるけれど。

「こんばんは」

 日曜の遅い時間。翌日仕事のある人は大体遅くまで飲んだりしないから、この時間の飲み屋は結構空いていることが多い。この店だってそう、例外ではなく店員二人に対してお客は二人組のひとつだけだ。

 いや、暇じゃないよ? やることは沢山あるんだから・・・ひとまずは呼吸、とか?

 かろん。

 そんなことを考えていると扉のベルが控えめに鳴った。どこかホッとしているのは暇過ぎて困っていたからじゃない。

「いらっしゃいませ」

 声を掛けるとにっこりと笑顔を作って返してくれた。どうしたの、珍しい。

「こんばんは、お久しぶりです」

「久しぶり、元気にしてた?」

 ゆっくりとした足取りでカウンターに腰かけたのは三か月前にミケの営むオネェスナックを辞めたヒカルだった。華奢な体つきは昔から変わっていなくて相変わらず女性物の洋服を綺麗に着こなしている。

「はい、おかげさまで」

 けれどそう言う割にはヒカルの表情はどこか気だるげだ。疲れている、とか?

「どうかした? 元気がないみたいだけど」

 そう言えばヒカルはどうして店を辞めたんだっけ?

「あは、そう見えますか? 嬉しい筈なんですけど」

 今度はそんな正反対な事を言う。嬉しいのにどうして切なそうな顔をするんだ。

「自分では自覚がないんですけどね。そう見えますか」

 頷いて返すと一回苦く笑ってヒカルは答えた。

「実は、性転換手術、受けて来たんです」

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