第5話 現実の社会へ (気付く、知る)

ようやく、わが家へ、おっさんの気持ちは病気前と何も変わりなく、只 障害者になったというだけ、暫くは、周りの人たちも良く家に来てくれた。そのうち、だんだんと、来客者は減り、以前は呼ばなくても、週に2~3日来てた人が今では年に1度来るかどうかである。話では耳にしてた事が現実になる、しかしそんなことより、生活して行かなくてはいけない、障碍者になって現場で作業はできない、如何するか、元受けからは、スタッフを揃え、いま迄通り仕事を受けてくれと、有難いお言葉、良く考えた挙句、お断りすることに、自分も職人、同じ職人さんを使いマージンを取る、是は、ビジネス上は、当たり前だが、おっさんには、ピンハネする様なことは出来ない、変な理屈で物事を考えるタイプ、そこで、自分でチラシを作り営業する、取った仕事は知り合いの職人さんに依頼しようと考えた、しかし、現実は、手足のもげた者に仕事を依頼する人など稀であり昔の関係者からもきつい言葉で窘められる、施工で生計を為していたおっさんは販売だけだと生活出来ない、なんせ、営業なんかしたことない、そこで、融資を受け新しい商売を始める計画を、以前の職は廃業することに、そんなある日、友人から会社を買わないかとの話が舞い込む、そんなお金などあるわけないし、おっさんにはそんな事を考える余裕などない、今、融資の話を金融機関にしてるところだ

そこで、趣味の磯釣りで知り合った人を思い出す、その人は、元やくざで組長だが組を解散して今は堅気、穏やかな人なので、釣り友として付き合うことができたのだ、こんな話がありますが、どうですか。元組長さん、受けましょう、私も生活せねばなりません、まだ、学生の子供がいますので、その会社とは介護福祉用品の販売会社なのである、条件として、社員ごと受けてもらいたい、金額は在庫商品の金額でよいとの事、後日、詳しい話を聞くため、話を持ってきた友人、元組長、その会社社長、おっさんの4人で会う、なぜ会社を売却するのですか、経営状況を確認、赤字ではないが苦しい状態、社長には後継者がいないし、もう年なので、話の最後に今の在庫の金額を聞く、元組長 何とかそれくらいなら、一緒に帰る車中、おっさんと元組長は車の中でこれは、良い買い物ですね、と 2人で笑いが止まらない、それほど安い買い物なのだ。この話がもっと早くおっさんに来ていればおっさんでも買える金額と悔やまれるが、どうしようもない、元組長のためだ。その後契約、一月後、融資の話は駄目になり落ち込む日々のおっさん、そんなある日、1本の電話、知らない番号だ、出てみると介護会社の元社長、社長いわく、おっさん、社長になってください、、事情を聴くと手続きを進めていく中で、元組長であることが分かり、代表に彼をすることはできません、会社を買うのならば、おっさんに代表をして貰いたい、元組長からもすぐ電話があり、買いたいから、代表を受けてもらいたい、元組長をオーナー、代表をおっさんにとの形で収まった。おっさんも職を見つけることが出来、喜んだのだが、半年もしないうちに元組長の化けの皮が剝がれる、立て直しを図る、おっさんや社員、好き勝手に行動するオーナー 会社の金は俺のもの、会社は俺の物、やはりこの人を見誤ったと後悔するおっさん、2人に亀裂が入りやがて喧嘩別れになる、1年後おっさんは、会社を辞め職安通い、障害者ではなかなか仕事はない、奥さんにもパート勤めをしてもらい息子さんの援助とで何とか生活できている。これまでいかに自分が恵まれ、贅沢してきたかを知る。景気の良い時、人は集まり、利用価値が無くなれば人は去る、ただ家族だけ変わらず居てくれた。本当の友とは人間の生き方とは何かを知らされた一年、今では、仕事を持って来た友も元組長もこの世にはいない、おっさんが生き延び、2人の友人は病気で死んだ、人生は分からない、その後職探しと同じような人間関係の苦労が繰り返す、理想と現実は違う、やがて、鬱状態に近く、家に閉じこもりがちになってゆく。

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