第4話 さとり
屋敷にやって来た桔梗は、主に、
細やかに気を配り、例えば、直比呂が命ずる前に
優しい物腰でいて、かいがいしく身の回りを整えてくれる――そんな桔梗のことを、日々
そんな普段は穏やかな桔梗だったが、ある時、意外な一面をみせる時があった。
知人がある人物を連れ、何やら重要な話があると言って、直比呂の屋敷を訪れた時である。
いつもなら、客人が居心地の良いように細やかに気を配るはずの桔梗であったが、その日に限って、茶碗を立て続けに割って騒ぎを起こしたのである。
―― ガシャン ――
「申し訳ございません。只今、
―― ガシャン ――
「申し訳ございません」
―― ガシャン ――
これでは落ち着いて話が出来ないと思った客人は、「また出直して参ります」と屋敷を後にした。
普段の桔梗からは想像できないその様子に、少々
「どうしたのだ。いつものお前らしくもない……。 どこか具合でも悪いのか?」
「申し訳ございません。実は……、先程のお客様に、何やら怪しい影が付いておりました……」
「何っ!」
「旦那様にとって悪い感じが致しましたので、お帰りいただくように
その問いかけに、下を向きながら直比呂の耳元で小さな声で
「そんな馬鹿な……」と、心では納得がいかない直比呂だったが、日々良く尽くしてくれる桔梗が
だが、そのひと月ほど後になって、あの時の客人が、
「桔梗のおかげで、大難を逃れることができた……」
と、改めて桔梗に対する大きな感謝の気持ちがこみ上げてくるのだった。
屋敷に戻り、その日も
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