不安

 ああもうどうしたらいいんだ!!

そんな気持ちをなんとかこらえて部屋を後にする。


「で、結局俺は何をしたらいいんだ。」


まだこの世界に来て二日目。それにまともな武装もない。


「あの王はなにを考えているだろうか。」


封じていた言葉が漏れる。


「お父様の考えはわからないけどとりあえず急ぎましょう。カイト君の装備を準備するわついてきて。」


駆け足で城内を走ると衣装室という名の防具部屋が広がっていた。


「ここが私たちの防具部屋。とりあえずは、好きな奴を付けていいよ。」


流石は王の所有物、揃えが完璧すぎる!


「じゃあこの青と黒の奴をもらおうか」


「決めた?じゃあ向こうの更衣室で着替えてきてね」


画面タップで着替えれるのかと思ったけどさすがにそれは無理だったか。それでもワクワクしながら更衣室の戸を開くと…


そこには着替え中の女性の姿があった。


『きあぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!』


女性の悲鳴が木霊する。


「何!なに!なにぃぃぃ!!」


「あわわ、ごめんなさいごめんなさいすぐでますううう!」


悲鳴を聞いてエイルが駆けつけてきた。


「何!何があったの……あっ」


なにが起こったか悟ったエイルは静かに男性の更衣室に案内してくれた。


「ごめんなさい、こっちは女性用なの。男性用はこっちです。私の説明不足でした。」


「いや、こちらこそすまない。自分の好奇心につられて誰か入っているか確認するのを忘れていたんから。」


「さっきの子には着替え終わったら悪かったと謝罪しておくよ」


「ちなみにこれって、一瞬で着替えたりってできるの?」


「できるにはできるんですけど、装備を一度外さなくてはならなくて。その時に裸になってしまうんですよね…。」

「なのでこうやって各更衣室が設けられています。」


(なるほど、それは無理だな。)


「わかった、では着替えてくる。」


「さっきの言葉からして装備画面から装備できそうだな。」


スクロールして装備画面をひらくと所持アイテムの中にさっき選んだ青と黒の服が入っていた。


「えーと、まずは今きている服を脱がないといけないから装備解除っと」

「その次にさっき選んだ黒の服と青のコートをセットして。」


ぶわっと装備が変わる。


「おお!!すげぇ本当に一瞬で装備できた!!」

「この世界すげぇ、ゲーム世界ってスゲェェ!!」


自動でできることに感動しながらも更衣室を後にする。


「あ、きたきた。カイト君さっきのこが出てきたら謝ろうね。私も場所を明確に言ってなかったのは悪かったと思ってるから私も謝る。」


ガチャ


先ほどの女性が、赤らみながら出てきた。


「ビクッ…あなたはさっきの…とエイル様?」


「ごめんねさっきの彼は悪気はなかったの。」


「すいませんすいません。」


「いえ大丈夫ですが、エイル様この方は誰ですか?」


「そっかあの場に立ち会ってない人たちはカイト君のことを知らないひともいるんだ。

えっとはカイト君って言って今は王子で後の王になる人だよ。一昨日、日本っていう世界から召還されたんだ。」


「次期王だって!大変申し訳ありませんでした!どうか、命だけはお救いください」


「いやいやいや、頭をあげてください!私の方が悪いので!それに命なんて絶対に取りません!」


「えっほっ本当ですか…ありがとうございます。」


「ねぇ、何で次期王って聞いて態度を変えたの?」


「それは、20年位前にこの国で内戦があってその時にクレモンド様が反逆者の国民を多く殺害しました。その中には私の親友だったアミロアもいました。王は国の発展には優柔不断にならない御方なので残酷でした。

私はアミロア達の処罰の所は見るに耐えなかったので一人ずっと泣いていました。そんな暗闇に閉ざされた日々にあの方が声をかけてくてました。」


「あの方って?」


「クレモンド王軍の内戦の指揮を努めていたガイウス団長です。あの方は私たちに一から戦い方を教え、何でも居場所を作ってくださった。私のような人は私たちのほかにもたくさんいます。私達は皆、ガイウス団長の懐に憧れてここにいます。」


「私の生まれる前にそんなことがあったのですね。お話ししていただきありがとうございます。お父様はそんなことをしたのですね。」


「僕はよくわからないけど、クレモンド王には少し警戒の目をむけていたほうがいいかもね」


この場には、なぜか不安になる空気が流れていた…



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る