軍師の存在

城にもどると何やらメイド達がせわしなく動揺をしていた。


「どうしましたか。」


「それがつい先ほどアハト王国から宣戦布告があったんです。」

「それで、王は迎え撃とうとしているのですが、明らかに不利です。」


「戦争…そうだった、この世界は戦争は日常茶飯事なんだ。


「お父様はどうする気なの」


それは自分でもわかる。この国はアハト王国に敗北し領土の2/3を失っている。

今戦ったら必ず負ける。そう確信できる。

どんな強い軍師でもってもこれは無謀だと腹を切るだろう。


「今からでもクレモンドさんに応戦しないように言いにいこう」


「わかった。案内するね」


そのころクレモンド王のもとにはひとりのメイドの姿があった。


「クレモンド様、本当によろしいのですか。」


「構わない、なぜならこの戦には勝たなくてよいからだ」


「では、多くの兵士や民は無駄死にしてもいいとおっしゃるのですか」


「なに、そんなことはおもってあらぬ。それにこの戦の指揮はカイトに任せようと思っている。私もこの世界で初めて戦争に関わった時、多くの死骸や血涙を見た。そしてそれは今回と同じアハトとの戦だった」


「ではよりいっそう、指揮をとったほうが無難では?」


「いいや私はそうは思わない。彼は私が見た地獄けしきを変える判断力を持っている。」


「では、クレモンド様は今回は参戦なさらないということでしょうか」


クレモンドは静かに頷く。その目には明日の兆しがみえているかのように

 それからわずかな時間がたったある時


 バタンッッ


慌てた男女がドアをとばした。


「クレモンド王どうする気ですか!!」


その怒声は一点に集中していた。

すると待っていたかのように一人のメイドが冷静沈着に話し始めた。


「エイル様、カイト様今回の王は考えがあってのことなのです。」


「カイト様、今回の戦指揮をとるのはあなたです」


その言葉には胸を躍らせる者もいるだろう。しかし、今は現実である。

自分だってファイ○ーエン○レムやってて策略をたてるのは好きだったけど。

それは『ゲーム』だからである。

そう、今は現実である。現実を受け入れるにはこの時間は余りにも急すぎた。


「はぁぁ!!?」


「では、私はメイドの統括を行いますのでこれで失礼いたします。」


「…。」


クレモンド王は一言も喋らず部屋の奥へ消えてしまった。なにを考えているのかもなからない。しかしその形相は凛々しくも麗しものであった。















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