自分しか
誰もが一度はかっこいいことがしたい、英雄みたいになりたいと思ったことがあるとおもう。
「なんで自分なんだろう。日本ではごく一般的な高校生の僕が戦争に参加してなにができるだろうか。」
騎士長の話を聞いてからそんな自問自答が頭から離れない。
「早速詰みゲーか?」
ゲーム感覚でやっていたら本気で命なんか消え物になってしまう。
「あぁやってらんねぇぇ、自分が戦争で活躍するにはどうしたらいい!」
一度部屋に戻って状況を整理しよう。穴を見つけるのはそれからでも十分だ。
部屋に戻り本棚を漁っていると、誰かがドアを叩いた。
「カイト君いる?」
「ああいるよ、どうしたんだ?」
「…それはこっちの台詞だよ!」
「ガイウスさんにカイト君の状況を聞いて急いできたんだ。」
「エイル…、ありがとう。」
「悩みがあるなら私に話して。私はあなたの家族なんだから。」
彼女は自分をこんなにも励ましてくれる。そんな彼女が僕は自然と好きになっていた。
「エイルは戦争についてどう思う?」
「…。私は戦うことはとても嫌いだよ。だぇどこの世界は15の国と種族が入り乱れていて、自分達が戦わないとこの国の民も歴史もなにもかもが無くなることになっちゃう。確かにこの国は強いわけじゃない、けれど私はこの国を誇りに思っている。だから戦う。」
エイルはこの国を愛している。それが今までこの国で生まれ育ってきた彼女の本心なのだろう。
「一つ質問してもいい? カイト君の住んでいた世界はこうやって違った民族・国同士の戦争はあったの?」
「自分の住んでいた日本って言う国は少し前までは他国と戦争していました。ただ、原爆という核爆弾が投下されて広島長崎は生と死がわからない地獄になりました。あくまで教本で見ただけだけど。」
「ゲンバクっていうのがどれほどのものかはわからないけどカイト君の国も大変な目にあってたんだね。ねぇ、カイト君も戦争は嫌いでしょ、だったらどうやったら他の国と戦わず友好関係が築けると思う?」
僕は必死に考えた、ただ自分にできることは浮かばない。この国ではまだ自分は生まれたての赤子同然なのだから……あっ、
一つ自分にしかないものがあった。それは『知識』だ。この世界の人々は自分のいた世界の出来事を知らない。つまり唯一今現在で自分しか持ち合わせていないものなのだ。
――――――――――――――――――――
それからある程度時間がたち、自分が覚えているだいたいのことを話した。
日本の歴史、家族のこと、自分の心境。不安な点が多過ぎだ。父さん母さんは心配してないだろうか…。カノ……。
「そんなことがあったのね…」
彼女はそっと僕に近づき抱きしめてくれた。
それはとてもあたたかくつつまれた気分であった。
「大丈夫、この世界では必ず私が守ってあげる。だからカイト君も私を…私たちの希望を守ってほしい。」
彼女はどこまで僕に親切なのだろう、そんなこと言われたら誰だって応えたくなるだろう
「ああ、必ず勝ってやる。勝って平和な世界でエイルと結婚する!」
堂々と言い切れるほど精神力が強かったなんて
「ありがとぅ、必ず勝とうね」
彼女は涙ぐみながらも強い返事をかえしてくれた
「となれば早速準備だ、行こう!」
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