表裏と歴史

急上昇する身体は時間という概念が解らなくなるほどはやく、体感温度が約三度ほど下がったように感じた。現在は晩夏であったが、少し肌寒く感じるようになった。


「はぁぁーー!気持ちぃーーーー!」

「どう?空を飛ぶのって最高でしょ!」


さっきとは人が変わったように大声をだしているエイル。


「はいぃぃぃ楽しいですすすぅぅーーー」


この速さでまともに会話をすることができるのは慣れなのか?でも確かに空を自由に飛び回れるのは快感だ。


「でしょー!カイト君もドラグーンになったら自由に飛べるようになるからね」


シェムハザに乗ることができたらどれだけ楽しいのだろう。考えただけでワクワクする。


「プレーナ着陸」


プレーナはしっかりエイルの言葉を聞き取り下降体勢をとった。主従関係がしっかりなせているからできることだと思う。


「はい終わり。どう?ドラグーンは日常適に竜を使えるから便利なんだよ」

「ドラグーンになるには此処の試験を受ける必要があるんだけど、カイト君は召喚特権があるから試験は受けなくても大丈夫。」


それは特権乱用にならないのだろうか。甘。


「じゃあ、今日は1日自由にしてていいよ、取りあえずお金は渡しとくわ。」


そう言うと、自分のログに10万キールが入った。この国の通貨単位はキールというらしい。


「じゃあ私たちはこれで。バイバイお兄ちゃん」


二人とも行ってしまった。取り敢えず、この国の状況を把握しないといけないから図書館的な場所に行こう。


ログから図書館の位置を確認する。地図を持ち合わなくても場所が分かるのが便利なシステムだと思う。ただ、一度その場所に行かないとワープできないのはクソ仕様だと思ってしまう。


図書館に着きメルクリアの歴史について漁ってみた。そこで気になる資料を見つけた。


「アハト王国に敗れて領土の2/3を失い、前王が処刑された。兵士も多く失い内戦が頻繁に起こった。それを治め、今の国を築いているのが現王であるクレモンド王である。今は休戦状況下にあるが、いずれ他の国も攻めてくるであろうから国の発展を急ぐべし」


クレモンド王は偉大な人なのか。自分が次期王になると思うとまだ荷が重く感じる。

しかし、なぜメルクリアがアハト王国に敗北したのか。アハト王国は当時、銃やボウガンなどの当時の近未来武器が高く発展していてメルクリアの竜騎士団が壊滅的になった。

この時の副団長が現在の騎士団長ガイウスである。


「これから会いに行ってみよう。そしてこの戦争の全貌について知りたい。」


城へワープする。こういう時にはかなり便利だ。


「えーガイウス騎士団長の部屋は。」


ガシャっガシャっ

城内地図を見ていると全身装備した男性が歩いてきた。


「おまえは次期王の者か。こんなところで何をしている」




「はい、ガイウス騎士団長のを探しています」


「私がガイウスだが、要件はなんだ」


いきなりの対面に動揺を隠せない。ただ、好都合なことのにかわりわない。さっきの本にかいてあることがただしいなら、この人は戦の知恵を持っている。


「メルクリアの歴史について教えて貰いたいです。古本でガイウス騎士団長の姿を拝借したのでなにかご存知ではないかと思いましては」


「ふむ、この国の歴史な。そなたは竜狩りの名を知っているか。奴は天才であった。劣勢に進んでいた戦をたった独りで巻き返し、アハト王国を勝利へと導いた。前団長オスカはその者に殺害され、次第にメルクリアは劣性体制に陥った。」


「その天才とは誰ですか。」


「それが、わからないのだ。奴は戦場の中に消えた。敵国アハトの王バレルタも奴の存在は誤算だったようで、祖国の勝利を深く喜ぶことはできなかったそうだ。そこから奴は影の陰謀者と呼ばれている。」


「影の…陰謀者。」


その言葉にに再確認した、この世界に召喚された理由を。自分がこの世界で何をすべきなのか。



「ガイウスさん。私に竜の契約と戦い方について教えてください」


今の自分はあまり迷いなく戦う精神があった。


「王子自ら戦に参戦するのか、それはいい騎士団の皆も士気があがるであろう。ただ、一つだけ忠告させてくれ、『無血の考え』も存在することを。戦場を駆ける者が吐く言葉ではないとおもうが、戦は刃を交わすだけがすべてではない。」


戦場に生きる者の知恵なのか―


「ありがとうガイウス騎士団長。その言葉教訓にさせてもらう」


「そうか、じゃあな」


自分もいずれ戦場に出る身、表裏を持って戦わなければならない…。











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