第11話 魂のありか

血を吐く紅。駆け寄ろうとしたクルミに向かって、紅は叫んだ。

「来ないで!!」

「でも!!」

紅が死んでしまう。

「大丈夫。私は死なない」

もう一度紅の体に剣が突き刺さる。いったいどこから剣が飛んできているのか、皆目見当がつかない。


「やあ、紅、久しぶり」

どこからか男の声が聞こえてくる。

その男の声を、紅は知っている。

「お兄様」

紅の腹違いの兄。

また剣が紅の方へ飛んでくる。紅をかばうため、クルミは紅を抱きしめた。

「白花!!」

とっさにクルミは神の名前を呼ぶ。

虚空から現れた美しい女神が、飛んできた剣を切り裂く。


「ほう?珍しい。神の使いか。その神は美しい。その神を私にももらおうかな?」

にこやかに牙をはやした優男が、紅とクルミの前に現れた。

「兄様、あなたにあげるものなんて、何もないわ」

 紅は、男の方へ短剣をなげた。投げられた紅の短剣は赤い光を発し、男の姿は残像のように消えた。

紅は舌打ちをうつ。

「逃がしたか」

「紅、大丈夫」

「大丈夫じゃないの、あなたのほうじゃない。私なんかかばったから。私は死なないのに」

 紅をかばった際、クルミの腹には剣が突き刺さっていた。そっと、紅はクルミの頬に触れる。

 剣はクルミの急所に突き刺さっている。クルミはもう助からないかもしれない。

血止めの護符を、クルミの体に張り付ける。

「待っていて、今、医者をよぶから!」

 紅が叫んだその時、目の前に白いワンピースを着た女があらわれて、言った。

「どうしたの?」

「あなたは?」

 紅は女を睨みつける。

「その子を助けたいのなら、君次第」

そういって、見知らぬ少女は微笑んだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る