第10話 境界線
「魔術師の学校は、現と幻の境にあります」
紅は空き地の一点で止まる。
「現と幻?」
クルミは首をかしげる。
「マヨイガって知っている?」
マヨイガ?まったく知らないクルミは、静かに紅の瞳を見つめる。
「見ていて」
紅は、水が入った小瓶を地面にたらし始める。すると不思議なことに、水がわきおこり、水面から大きな煉瓦の建物があらわれる。
見ていたクルミは、度胆を抜かれた。
「何、これ?」
「マヨイガと言われたのはただの森に迷ったものの錯覚だと、私たち魔術師は予想したの。この液体は人間の脳の錯覚をただす液体。通常はここに建物があるとは、普通の人間は認識できない。私魔術師がここの場所を認識できないよう、脳の錯覚をおかすように、しるしをつけているから。
この建物こそが、私たち魔術師が誇る学校よ。ようこそ」
そう紅は嬉しそうに誇らしそうに、微笑んだ。
「ただの人間の私が、隠している魔術師の学校にいってもいいの?」
「あなたは普通の人間とは違います。魔術師の才能があるわ」
「魔術師の才能? 」
「魂と肉体の剥離が顕著であるということ」
「魂? 」
紅の言っていることがまったくわからず、クルミは首をかしげる。
「自分の魂の存在を自分で認識できること、それが魔術師の必須事項なの」
「魂が、わかる? 」
「あなたは少し違うわね。そうあなたの魂の存在が私には見えないの」
紅の言葉は、クルミにはよくわからないはずなのに、ひどく苦しみをおぼえ、ひどいめまいを起こす。
「私は」
クルミが何か言葉を発しようとしたとき、紅の腹部を剣が貫いた。
クルミの心臓が凍りつく。
「紅!!」
クルミはあわてて、紅のそばに走り寄った。
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