第5話襲撃、それから

突然窓のガラスが割れ、黒い影のようなものが、クルミに襲い掛かってくる。


「逃げて!!」

 紅に突き飛ばされて、クルミは椅子の上から転がり落ちる。

「紅さん!!」

 あわててクルミはおき上がると、そこには腕がない紅が座り込んでいた。クルミの心臓が凍りつく。


カーカーと鴉の鳴き声が部屋に響き渡る。


「いやだ。まだ、魔女がこの世界にいたなんて」


いつまにかわれた窓の前に、メガネをかけたおさげの少女が立っている。少女の手には鴉が止まって羽ばたいている。


「我々は魔女なき、この世界をつくるもの。汚れた魔女は死んで頂戴」


 鴉を従えた少女に、紅は笑いを漏らす。


「青の教会のやつらか。魔術師を根絶やしにするつもり?」

「お前たち魔女と一緒にしないでちょうだい。淫乱で、汚れた、雌豚ども」

「私はいいとして、ここに民間人がいるわよ?それはいいの?」

「汚れた魔女と一緒にいるじてんで、罪深い存在。しねばいい」


 鴉を従えた少女は取り出した拳銃を、クルミの方へ向けた。


「逃げて!!」

紅の犬が、少女に襲い掛かっていく。

「紅!!」

紅はクルミの方を向いて、にっこりほほ笑む。

「また会いましょう」


クルミは逃げた。後ろを振り返らず。別にいきものがしぬことなんて、罪悪感などないのに。

紅の微笑みが、目の奥にちらついてはなれない。


必死で道を走るクルミの前に、一人のスーツ姿の男が立ちはだかる。男はあおじろい今にも死にそうな顔をしていて、クルミの顔を見て言い放つ。


「死ね」


クルミの体を、黒い影がおおい隠し、クルミの皮膚や体液を咀嚼し、とかし、くらっていく。

すさまじい激痛にクルミは悲鳴すら、虚無の影に引きずり込まれて、発することはできなかった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る