逆転の発想


 かつて、私は「運動オンチでビビりで気が弱くて積極的になれないから、乗馬には向かない性格なんだろうなぁ」と思っていた。

 実際、私の周りで馬に乗っている人たちは、皆、怖いもの知らずで勝気、尻込みしないで馬に乗り、ずんずん行ってしまうようなタイプばかり。

 その中で小さくなっては「私には向かないスポーツだな」なんて思い込んでいたのだ。


 だが、実際はどうだろう?

 向かないのではなく、方向が自分らしくない方ばかり見ていただけじゃないかな? と思えてきた。

 そして、自分らしくない方向ばかり見せられて、向かないと思った人はやめていってしまう、だから、多分、私のようなタイプはここにいないんじゃないかな? と思い始めた。


 人は、いろいろな人がいたほうがいい。

 人それぞれに馬へのニーズも違うから、馬も生きる道を与えられる。


 誰もがブンブン馬に乗りたくて、走り回りたくて、競技でいい成績が収めたくて……だけではない。

 そういう人ばかりじゃないから、馬は生きながらえるのだ。

 馬をいたわるだけでも癒されて幸せになれる人がいるから、老齢だったり、故障を抱えていたりする馬にも生きる道がある。


 運動オンチだったからこそ、乗馬を続けられた面もある。

 何をやってもうまくいかず、がっかりすることばかりのスポーツの中で、乗馬だけは馬という相棒を持つことができる。

 相棒である馬と仲良くすることが楽しいから、たとえ、なかなか上手に乗れるようにならなくても、楽しめることができたのだ。


 乗馬に向いていない性格なんてない。

 ただ、向いている方向があっていないだけだ。


 馬を見つめ、自分を見つめ直したら、自分らしい乗馬ライフが見えてくるはずだ。

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