第31話 むしのしらせ
昔から、動けない兄の代わりにあちこち旅して、見つけた物や景色を兄に届けるのが僕の仕事だった。
庭から始まった探索の旅は、通りの向こうへ、街の端っこへ、隣町へそして国の反対側へ至る。あてもなく旅してバイクを停めては山や空や人を撮り、マーケットで工芸品や絵葉書を買った。おかげで兄の病室は、いつも賑やかだった。
ダイナーの一席で、道で拾ったダイスを転がしながらメールを読む。母の文で兄の調子が悪いと淡々と綴られていた。
帰らなければ。戻りたくない。会わなければ。見たくない。
ダイスがテーブルから転がり落ち、手を伸ばすとチカチカ青く光った。こんな仕掛けがあったのかと拾いあげる。
静かな青は兄の目に似ていた。
改行・スペース抜き297字
Twitter300字ss企画 第七十五回 お題「届く」
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