第32話 兄弟

 生きてるじゃん、と弟は笑って何か投げた。受け止めた手を開くと小さなダイス。

「お土産。道で拾った」

「どんどん安上がりになるな」

 弟は椅子に座り、窓を開き煙草を咥えた。抑揚のない声で、元気で良かったと言うので首を振る。

「そうでもない。次は冷たくなってるかも。今のうちに顔見とけ」

 鏡で足りてる、と嘯きしばし沈黙ののち、弟は口を開いた。

「それ、投げると兄貴の目みたいな色で光るよ」

 それはつまり、弟の目と同じ青という意味だ。ふうん、と弟に投げると、額にぶつかり跳ね返ったダイスはちょうど中間で止まった。

「あれ?」

「何の色だって?」

 一を上にして警告灯のように真っ赤に光る。どちらが影なのか、問われているようだった。


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Twitter300字ss企画 第七十六回 お題「影」

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