2019年

「バカにつける薬はないって言うじゃん？　飲む薬はあったんだよ」

　そう言った顔は、どう見ても真面目そのもの。こっちは呆れて開いた口が塞がらない。

「バカみたいな顔になってんぞ。これ飲む？」

「……なんでもう入手してるの？」

　貰いもん、と言う彼に追求する気力もない。つける薬なのに飲んじゃったの、というベタなツッコミも成立しないなら、こちらとしてはどう本題へ戻すか考えるだけ。今大事なのは、与太話ではなく真っ白な宿題だ。

「即飲もうとして、迷ったんだ。もし頭が良くなったら、こうして勉強見て貰えなくなるだろ？」

　さらりと続いた言葉に、顔が火照る。なにこいつ、本当は頭良いんじゃないの計算じゃないのタチ悪い。

　とりあえずその薬は、没収だ。

Twitter300字ss企画第50回お題「薬」

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