第5話 食を食して食となる

 イライラした日には、パン屋さんで食パンを買うことにしている。切り分けられていない食パンを手でまっぷたつに引きちぎるのだ。スカッとするし、しばらくコンビニのパンでは味わえない美味しいトーストが朝ごはんになる。

 しかし今日は、いつものパン屋が休みだった。仕方なく駅のパン屋まで来たが、そこも閉店していた。二十四時間営業のスーパーに来たものの、切り分けられたパンには食指が動かない。

 そうだ、パンを焼こう。

 私は売り場を移動した。


 数時間後、不格好なパンがオーブンから出て来た。これを私は引き裂こうと言うのか。なんという食への冒涜!

 丁寧に切り分け、トースターで彩りよく焼く。既に朝だ。私は手を合わせた。


「いただきます」



Twitter300字ss企画 第47回 お題「食べる」

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