第3話 帰り道の大勝負

 家まで、あと半分。

 コロコロ転がる石を追いかけて蹴る。白線を越えた石を、歩道へ戻すよう強く蹴る。

「あっ」

 石が側溝の隙間に転がり、そのままぽちゃんと落ちた。

「あーあ」

「よっしゃ、明日のプリンもらい」

 裕太がランドセルを叩いて笑い、淳は舌打ちした。石蹴りも、白線だけ踏むのも、段差の上だけ歩くのも、負け続きだった。

「ちゃんと歩きなよ」

 後ろからよく知る声がして、ポケットに手を突っ込んだ。小さい包みが中で潰れる。

「うるさいぞ、唯」

「そっちが危ないから」

 唯は二人を追い越した。

 石を蹴り続けたら、白だけ踏んで帰れたら、高い所だけ歩いて帰れたら、唯に渡す。そう思ってもう何日か。明日こそ、と淳はポケットの中で手を握った。


Twitter300字ss企画 第45回 お題「帰る」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る