第2話 無機物には見えない色

「今日の空は、こんなに青いよ」

真っ青なカメレオンが教えてくれた。

「今の空は、こんな感じ」

足元の水たまりが、空の色を映してくれる。

私の目は下を向いていて首も動かない。空がどんなものか分からない。

私の声が分かるふしぎな子が、ある夜泣き笑いの顔で言った。

「この道暗いから怖かったの。いつもありがとう。ねえ見て、今日の空はとっても綺麗よ」

その子が見せてくれた鏡には、焼きたてのパンみたいにぽっかり浮かぶ『月』と、割れて飛び散ったガラスみたいにきらきらした『星』が、一面に輝いていた。


時はたち、私も老いて倒される時が来た。

初めて見上げる空は、青く、高く、澄んでいて、太陽は優しく私にお疲れ様と微笑んでくれた。



Twitter300字ss企画 第43回 お題「空」

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