いじめ
@kuma1214
第1話いじめ
これはとある初老の中学教師が生徒達に話したお話です。
「君達にとっていじめとは何ですか?」
生徒たちは口々に言った。
ある生徒は、
「人に嫌な思いをさせること。」
またある生徒は
「間違った行動。」
先生は生徒が静かになるのを待って話を続けた。
「このクラスにいじめがあるとは思いません。しかし、これから言う事をしっかりと
覚えていてください。」
先生は一拍置いてから話し出した。
「この学校には昔、いじめを苦にして自殺した女子生徒がいます。私が若いころ受け持った学年の子でした。その子は決して明るいとは言えずどちらかというといつも後ろ側で静かにしてる子でした。ですが、いじめられる理由などありませんでした。いじめていた生徒も特に理由はなかったそうです。
実はその生徒は自殺する一ヶ月前に私に相談に来ていました。
その内容は、余り関わりがなかった3人の男子生徒にいじめられている。
と言うものでした。その相談を受け、私は女子生徒と一緒に彼女のクラスの担任に
このことを言うと
『馬鹿馬鹿しい、勘違いだ』
と言った。そのときの彼女の顔は悲しそうな顔をしていた。私は彼女に言った。
『またいつでもおいで、相談のるから。』
私は多分力になれなかったのでしょうね。彼女はその後一度も来ませんでした。
私は悔やみました。何かできたことはなかったのか、いじめをやめさせる方法が
無かったのか、いまでもよく考えます。いじめとは人を傷つけるのではなく、人を
殺す方法だと思ってください、実感は無いかもしれません、罪も殺人より軽いかも
しれません。しかし、失われた命は戻りません、傷つけられた心は直りません。誰
にも人を傷つけ、殺す権利などありません。当然だと思うでしょう。
しかしその当然ができず、苦しんでいる人がいるかも知れません。
なら、どうすればいいかなど他人に聞くものではありません。自分で考え、自分で答えを出し、自分で示す。それがあなた達にはできると信じています。いじめを失くす事はできないと思います、けれど、止めることはできます。
忘れないでください、皆さんの行動で人を助け救うことも、傷つけ殺すこともできると言う事。人を信じ、手を伸ばす事を決して忘れないでください。」
生徒たちは静かに話を聞き続けた。いつもなら寝てしまう生徒、周りとしゃべってしまう生徒、そんな生徒ですら真剣な目をしていた。
先生は白紙を配布し10分間時間を取った。
「そこに思ったことなんでもいいです。書いてください。書けた人から私のところに提出してください。あ、無記名で構いません。」
生徒たちは一斉に書き出した。6分を過ぎたころ一人また一人と提出してきた。
字がきれいな生徒、汚い生徒、消して書き直した生徒、いろんな字でいろんな文章で書かれていた。先生が紙に目を通しているとその中にこんなことが書いてあった。
「いじめを失くせなければ、作らない環境をつくりたい。一人じゃ無理でもみんな
で作りたい。」
「止める勇気よりも作らない勇気を持ちたい。」
「自分ができること、相手ができないことを知って協力し合えればいいな。」
先生は後日、一枚のプリントを配布した。そこに印刷されていたのは自分たちが書いた
内容だった。しかも、ひとりひとりに感想が書かれていた。
最後の文にはこう締めくくられていた。
「君達ならいじめを止めることも作らないようにすることもできるだろう。」
先生は生徒たちが卒業と同時に退職した。その時、一人の生徒が先生に言った
「あのときの話、今でも覚えています。この先、ずっと忘れません。先生が話してくれ
たこと。」
生徒はお辞儀すると
「ありがとうございました。」
といって帰っていきました。
終
いじめ @kuma1214
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