第3話 深罪の聖女 3話

 神なる【大自然】が創造せし、人類による唯心世界――〈ナチュラスタ〉。

 その生命の光に満ちた惑星は、『三元心』と【七元素】によって構成されていた……。


 先ず『三元心』とは――〝三つの人心〟を指し示したものであり、その内訳としては『無垢なる純心』・『情理なる善心』・『背徳なる悪心』の三種となる。

 また、それらの精神状態・人格の性質に伴い――対象個体の両目にもその特徴が表れた。

 それは『三元心』に準じた〝三形態の瞳〟への変化であり、自己における内面の〝感情の変移〟が――外面の〝瞳孔の形状〟にも反映され、その心情が投影される現象を指すものであった。

 完全にリンクした心と瞳の因果法則。現時における精神の有り様が表面化する両眼……。

 その目は心を通して世界を映す――故に、目とは心の鏡であり、目と目で通じ合うことができ、目は口ほどに物を言うのである。

 つまりこの惑星では、自他の精神状態が目に見えて分かる――いや、目を見て分かる世界なのであった。


 もう一方の【七元素】とは――〝七つの元素属性〟を指し示したものであり、その明細としては【柩地】・【鏡水】・【業火】・【巡風】・【天光】・【冥闇】・【心命】の七種となる。

 またこの物語の舞台においては、人間に生来から備わる【元素属性】によって種族の祖国が分別されている特色があった。

 その国家としては、大陸の四辺に築かれた〝四つの君主制の大国〟――そして、その四大国に囲まれ中心に位置する〝一つの共和制の都市〟があった。

 四大国の名称は其々〈柩地の王国〉・〈鏡水の公国〉・〈業火の帝国〉・〈巡風の君国〉であり、残る一つの都市が新興交流都市〈心都〉と呼ばれた。

 其々の国名は単純明快に【元素属性】の名を冠したものとなっており、その種族のみの生活圏となっている。そのため必然的に各国共が閉鎖的で排他的な政治姿勢を執っており、異国者の往来は厳しく制限されている一面があった。

 やはり人種国柄が異なればその気質も異なり、主義思想や価値観、信仰形態にも隔たりが生じ、例えば【自然】に対する見解も――、国々で差違が見られるのであった。

 それに伴い、四大国間にて必要最低限の不可侵条約や貿易協定を締結することで――、これまで不毛な衝突を避けてきた長年の歴史があるのだ。


 種族属性間による社会思想の差異――それが原因で引き起こる人災戦争……。

 とはいえ、そのような水面下での懸念や緊張の状態が続くこの大陸にも――、良い方向へと向かう兆しがあった。

 その光明こそが……国家間の不和を排し、共存共栄を目指して調和を図り、永世中立の立場を執る――新興交流都市〈心都〉という存在である。

 そこは多種多様な人種や文化……各国の産物が集まる中心地であり、交易路や交渉会合の場としても機能する――特別な改革特区にもなっていた。

 そして種族間の問題以外にもこの世界には……、人類共通の脅威である【星災】という厄災が存在しており、その事変によって突発する外敵の蜂起に対し、各国は早急に協力体制を整備しなければならない危機的状況でもあった。

 だからこそ国交正常化や人々の安寧を目指す〈心都〉の存在は――世界唯一、〝未来への希望〟を見出せる場所として……、真の平和を願う有志から期待を寄せられているのであった――……。

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