第2話 黒髪の転校生

「新しくこの土月東中学校に転校しました笠川カスミです!土谷透君のことが大好きです!」

 その一言で新しいクラス替えで生き生きとしていたホームルームがもっと生き生きとさせて、一気に教室がざわめいた。三年になっても、クラスが一緒になったすばるが驚きながら僕の耳に手を当てて、想像してた通りの質問を口にした。

「おい!お前笠川さんのこと知ってるのか??」

「知らないよ!知ってるどころか、会ったことすらないよ」

「お?そんな嘘ついていいのか?」

「だから本当にちが、、」

「そこ!うるさいですよ!!みなさんも静かに!」


「「「はーい」」」


ホームルームが終わり次の授業の準備をしていると早速笠川さんが近づいてきた。彼女は、笑みを浮かべながら挨拶をしてきた。

「おはよ♪土谷君♪」

「お、おはよう」

素朴な返事しか出来なかった。彼女をよく見てみると、高校生みたいに身長も高くて、スタイルもいい。ついでにおっぱいも大きい。なぜ彼女は、いきなり僕に告白をしてきたのだろうか。謎だ。謎すぎる。

「おーい?土谷君~?」

「ああごめん。ちょっと朝のことでびっくりしてて」

「なんだ~私のことずっとジロジロ見てたから変なこと考えてるんかと思ったよ~」

バレてた。見てるのバレてた。てか、声も可愛いくて話し方も可愛い。可愛いすぎる!恋愛感情はないが、下心はある僕はうっかり顔に出てきてしまいそうだ。僕と笠川さんが話しているところを見てたすばるがこっちに来た。

「なーなー笠川さんはどのくらい透のことが好きなんだ?」

「んーとね~結婚レベル以上かな!」

「ぶふぉ!!」

予想をはるかに越えていた返答が返ってきたので吹いてしまった。恥ずかしい。周りの視線も、僕と笠川さんとすばるがいる方向に集まっている。すばるが驚いてる。いや、聞いたお前がそんな驚くなよ。


キーンコーンカーンコーン


授業始まりのチャイム鳴り、クラス1人1人が自分の席に着く。特になにもなく1日の授業が終わり、放課後になった。腹が減ったので急いで帰る準備をしていると、笠川さんが近づいてきた。

「土谷君、このあと忙しいかな?」

「どうして?なにかあったの?」

「今日からこの学校に来たから場所がわからなくて案内してもらいたいな~って」

「特に構わないよ」

さらっと返事をし、僕は机に荷物を置き笠川さんに学校案内をした。この時、このあと起きることを僕は知るよしもなかった。

 この学校はA棟とB棟に別れている。A棟クラス教室と職員室がある。B棟は、家庭科室、音楽室、美術室、各部活の部室などがある。案内が終わり、再び自分の教室に戻った時、それは起こった。

「ねぇ、土谷君はどうしてあのとき私を守ってくれたの?」

そう耳に語りかけてきた。僕は笠川さんが言っていることがわからなかった。

「守った?僕がいつ笠川さんを守ったの?」

「んもぅ!まだ気づいてなかったの?」

「え、なにが、、」


              “バサァ“


笠川さんの腕が翼になっていた。僕にはまだ理解できていなかった。この子は何者だ?動物か?宇宙人か?色々な謎が頭に出るなか彼女はこう言った。

「覚えてないのかな、、、私はあのときあの夕方で土谷君が助けようとしてくれたカラスだよ、、、」

その時あのとき脳に響いた声を思い出した。

『助けようとしてくれたきみのやさしさ、心強さ、その恩は忘れません、、、またきみの前に現れるまで待ってていてください』

まさかあのときのカラスが笠川さん、、、?そんなことがあり得るか、いやあり得てたまるか。

「覚えてる、だがそれが本当僕が助けようとしたカラスか信じられないんだ」

「この羽の傷見せればわかるかな?」

そう言い彼女は羽を広げ、傷を見せた。間違いない。あのとき助けようとしたカラスが負っていた傷だ。まさかあのカラスが女の子になって転生してくるなんて思いもよらなかった。

「ああ、確かにあのとき助けようとしたカラスだ」

「よかった!信じてもらえた!」

「でもなんで女の子の姿になって僕の目の前に現れたんだ?」

「そんなの当たり前じゃない、、、」

そう言い彼女『笠川カスミ』は僕に抱きついてこう言った。

「あなたのことをすきになってしまったから、、、」

僕はこの時心が揺らいでいた。今まではこんなことが無かったのに。締め付けられる様な感覚が僕は感じた。14年間恋愛感情なんてなかった僕が。人を好きになることがなかった僕が。その光景を廊下で見ていた『遥』城戸遥はただ立ち止まっていた。

          (おわり)

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あの日見た記憶は僕の前に現れた。 渡 常一 @PSYURI1212

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