第3話モモ太郎と鬼ヶ島。③


 か、帰れないだと!?



 驚き慌てるオレたちを、今更かよと、まるで腐ってとろけた生ゴミを見るような目で睨み付けながら、船頭様はこうおっしゃられた。


「あのなココに来るまでに何度も言ったが、もとはと云えばお前らが鬼退治に向かう誇り高い勇者の一団とかウソ吐いて、儂らを騙して村に居付き飲み食い三昧した挙句、バレそうになったら闇に乗じて逃げ出そうとしたからこの始末になったんだろうが、ああん??」


 はい。その通りで御座います。新鮮な魚に御飯にお酒、とってもおいしかったです。ありがとうございます!すいません!ごめんなさい!だからおうちに帰して!!!!


 ざざっと、きつく縄で縛られた手足を物ともせず、正座したまま深々と丁寧な土下座をかましてみせた。


『ああ、帰すのムリ、解くのもムリ。そんじゃまあ、今から鬼ヶ島に遺棄していくからヨロシクね♪♪』

「「「「ええっ!オレたち、あたしたち、自由になっておうちに帰りたいだけのにぃー!!!!」」」」


『『『『だから帰れないから!!!てか、お前らそもそも家なんかないだろうが!!!じゃ、そういう事でいってら~♪』』』』


 いやだァァアアああーーーー!!!!


 ざばん!ざばん!ざばん!ドボン!!


 ゴババババァ…バア!!!!


 アホのこの子らはともかく、オレは全然悪くないのに何でこんな目に遭ってるんだろう…。おかしいよ神様。あの世に行ったら先ず神様の弱みを探って輪廻転生的な手段を使わせてもらって、今より全然楽で可愛い女の子にすっごい囲まれた、実り豊かな人生を送らせてもらうよう腰フリながら説得するしかない。


 オレは海に仰向けで揺蕩たゆたいながら眼を閉じ手を合わせ、来世への期待に大いに夢はべらせたのだった。







「モモ太郎くん、モモ太郎くん。なにしてんの?頭大丈夫?」

「モモ太郎はん、手なんか合わせてみっともない。頭悪くてできもしない悟りでも開くんか?」

「モモ太郎よ、お前ホントなにしてんの?いつも以上にバカなの?死ねよ。そして盛大に成仏しろよ」

「バカとはなんじゃあ!死ねとはなんじゃあ~!!バカって死ねっていう奴が、心の底から死にさらして成仏しろやぁー!!!」


 モモ太郎は縛られた手足の不自由を物ともせず、鳥に狙われた芋虫が威嚇する様にむくりと立ち上がって、少女らにありったけの罵声を浴びせかけた。


 アレ?


「…水、ほとんどない」


なんでなのん?


 オレは不審に思ったがなんてことはない。ここは波打ち際だったのだ。ヤレヤレ、まだ死なずに済んだか。なんやかんや言っても流石は勇者様のオレ。無駄についてるな!


「「「いやだから、バカなの?・頭悪い・成仏しろ。って聞いたんだけど」」」

「もしもし?その口の悪さからココが浅瀬だって理解すんの、無理じゃありませんこと?」


 とか言って、あとはタヌ子たちの言葉をガン無視していたら、そこに海辺を離れていく小舟から声が掛った。なんだクソ船頭が、神に心底愛されたオレ様に何の用があるってんだ!


「おーい、歴史に残るアホども聞こえるか!聞こえていたら返事しろ!」


「うっせーな!なんだよアホ船頭!!」


「あのなァ。お前らアホで全然気付いていないようだから教えといてやるなぁ!お前らの手足を縛っている縄な、実はそれぐるぐる巻きにしてるだけだから、速攻解ける代物だぞ!!」


「あっ!モモ太郎くん本当だよ♪」

「身体ひねったらスルって解けたぞ」

「船頭はん云わはる通り、単に縄巻き付けてただけやんね、これ」

「くそー!オレたちめっちゃアホやん!!」


 地団駄を踏み悔しがる俺だけを尻目に、少女形態の三バカ妖怪たちは自由の身になったことを喜び、波打ち際で水を蹴り楽しそうに遊んでいた。


 くそが。


「おう!ほどけたか!良かったな【爆笑】あとなぁ!ドアホのモモ太郎の旗印【日本一】の文字も、お前らにこそ相応しい感じに変えさせてもらったからなぁ!んじゃ、鬼に気を付けて達者でな。アディオス♪」


 小舟の船尾に片足をかけ、カッコよく頭の悪いオレたちを憐れみをもって見送った船頭と漕ぎ手の三人組は、こっちを指差してバカ笑いしながら暗闇の海に消えて行った。




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モモ太郎とアレでユカイな妖怪たち♪ 良雪 @ryousetu1227

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