第2話モモ太郎と鬼ヶ島。②


『ぐっちゃぐっちゃうるせぇよアンタら。だったら巷で騒がれている鬼を退治して、しこたま大金でも稼いで、爺さんと婆さんを安心させてやったらどうだなんだ?ああん!』

『それに妖怪のお嬢さんたちも、自分の食扶持くらいは自分で稼がないとお前さんら、妖怪の名が廃っちまうぞ?へへへ♪』

『言うても、鬼退治する以外に生き残る道は無いんだがな!うはははは♪』

『まあ、お前たちの様な腰抜けの脳無し連中には絶対に出来ないだろうけどな!ぎゃはははは!!』


などなど、彼らが的確で誠実な意見を率直に述べてくれたことに、オレたちは感謝する。する。。


 でーも。だってオレたち全員囚われの身なんだもん。だから進んで鬼退治しようなんて気はこれっぽちもないんだもん。


 それになバーカ!オレは何にもしないでタダ楽がしたいだけなんだよ!五食おやつ付き昼寝付き、左団扇ひだりうちわで自宅で右手と遊んでいたいだけなんだよ!バーカ!!


 と、心の中でいきがっておこう。


 …それにもかかわらずオレたちは、理不尽にもムサイ親父たちによって小舟に乗せられ、あろうことか鬼ヶ島に連れて行かれようとしているのだ。世の中間違ってる!


「なにかがおかしい。オレほどのイケメン知恵者の勇者であれば今頃は、どこかの裕福で可愛い少女に気に入られ、頼みのしないのに左団扇(ひだりうちわ)の身分に落ち着いてウハウハの筈なのに。くそっ!アホで使えない娘ばかり抱えさせられてからに、世の中絶対まちがっている!」

「「ちょっ黙れ!!!そこのキモハゲデブ!!!」」

「えっと、言い過ぎだよ。モモ太郎くん」


 小舟に揺られ目前に迫った鬼が島を見据え、オレは自分の不幸を呪い深く嘆息した。もちろん、三匹の役立たずな少女妖怪の抗議は断然無視することにしてだ。


『『『『おいコラ!ハゲのモモ太郎おっさん以下のアホ集団』』』』

「てめえコラ!ハゲ言うなや!頭が開拓し放題の新天地状態ですね♪って云え!!」

「「「ハイなんでございましょう御主人様方!!!!」」」


 こいつらァー!いきなり主人であるオレを差し置いて服従の態度やつらに示しやがった!


 だが今はそれを云うまい。だって小舟を操る船頭様と漕ぎ手の皆様たちが、とっても下賤で愚かな私共に怒声交じりの御声を掛けてくださったので、怖くて今更うちのアホ妖怪どもをどうする事もできやしない。


 というか、ものスッゴイにらまれてる。えーと、皆々様の御尊顔を拝し奉り、いやはやなんとも有り難いことでございます。


 そしてオレは引きつった笑みを浮かべながら、荒縄でキツク結ばれた手足をフルに使い見事な土下座を敢行した。


「よく立場が分かっているようで宜しい。ところで頭が新天地」

「いえ、私めは醜いザビエルハゲで御座います」

「あ、そう。ならザビエルハゲ。お前も含めて全員すっかり忘れているようだから、もう一度いうがな」


 少女妖怪たちも一斉は綺麗な正座をしてかしこまり、無言でとおとい船頭様の御言葉に素直に耳を傾け拝聴の姿勢を取った。


「もう帰れないから」


「「「「なんですとぉぉォオオオーーーー!!!!」」」」


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