四話 サンシャインサマー

 部屋を案内された後、各々荷解きをし昼食をとるために受付に集まった。

 ホテルに着いたのが11時だったのでちょうど食堂が開く時間だったので、そこで軽く食事をとった後は「これからホテルの前の浜辺に行くからその用意をしろー」ということでいったん部屋に戻り水着や遊び道具をもって今回のメインである海へ向かった。


「いやぁ、海に行くだなんて何年ぶりだろうなぁ」

「あら?パークの海になら何回か行ってませんでしたっけ?」

「パークの旅の時やイベントの時には確かに行ったけどそれは仕事とかでだからなぁ。遊びに行くってのはパークに初めて来る前だから二年ぶりかな」

「パークが再開してからのぬしは忙しすぎて尻に火が付いた状態じゃったからの」

「まぁな…パークの経営は簡単ではないからな。今だけは仕事のことを忘れてパーっと楽しませてもらうよ」

「おぉ!海が見えてきたぞ」


 そうこうしているうちに海にたどり着いた。

 天気もよく絶好の海水浴日和だ。


「いやぁ~きれいじゃの!青い空、白い砂浜、青い海!まさに最高の景色じゃの!」

「確かにきれいね、水のきらめきが素晴らしいわ」

「喜んでもらえてないよりだ。じゃあ俺は避暑用のテントとブルーシートを敷く準備をしておくからあっちで水着に着替えてくるといい」


 そういうと更衣室を指さして着替えることを促した。


「別に私たちしかいないんだからここで着替えてもいいんじゃないかしら?」

「俺がいるからやめろ、あっちで着替えてきたら尻尾とか出していいから」

「われはこの暑さに耐えきれん。いっそこのままでも水に入りたいくらいだ。だが着替えて海にはいる事がしきたりなら今すぐ着替えてこよう」

「ま、フライングはずるいぞ!わしもいくぞ!」

「騒がしい人たちですね、私も行きますか」



 そう言ってゲンブとスザクは走り出しそれを追う様にセイリュウとオイナリサマが走っていった。

 だがビャッコだけは残った。


「ん?ビャッコは行かないのか?」

「私もテントを組むの手伝う、一応いつもの服より暑くないのに着替えてるし」

「あ、ほんとだいつの間にか涼しそうな服装になってる」


 ビャッコは黄色のラッシュガードに白のサンガードパーカーを羽織り、青色の短パンを穿いていた。

 いつもの服装と違った彼女は爽やかでかわいかった


「寝てたかったなら部屋にいてもよかったんだが…」

「いや十分寝た、ただ海に入らないってだけだ。お前だって海で遊びたいだろう?二人でやれば早く終わるだろうし、私が荷物を見てれば安心だろ。お前も遊べるしお互いに利益だ」

「まぁビャッコがそれでいいならそれでいいか」

「だろう?ならちゃっちゃと準備してしまおう、あいつらがくる前に済ませておこう」


 そういして二人はテントの組み立てをした。




   #




「よし、こんなもんでいいだろう」

「こっちも終わりましたっと、ありがとな手伝ってもらって。」

「いや何の問題はない、お前も着替えてくればどうだ?」

「ふふふ…実はもう着替えてあるのさ!今着てるのはこのまま水に入っても大丈夫なやつだからいいんだ」

「用意周到だな、あとはあいつらか…っと、噂をすればなんとやらだな」


 ビャッコと話していると水着に着替える組が戻ってきた。

 スザクは赤と白のチェックのビキニ、セイリュウは水色と青色のマーブルのワイヤービキニ、ゲンブは紫いろのオフショルビキニをまとい、オイナリサマは白色のビキニを着ていた。


「お待たせしましたーこれの着方はこれであってますよね?」

「あぁあってるぞ。しっかしすごいデザインだな…」

「なんだかこれを着てると涼しく感じるし、家でもこの姿でいようかしら」

「お願いだからそれはやめて」

「そんなことより海に入っていいか!?というかもう入ってくる!暑い!」

「あ、ゲンブずるいぞ!わしも入る!」

「ちょっと、ちゃんと準備運動しないとケガしますよー!」


 ゲンブが海に走り出したのにつづいてスザクとオイナリサマも砂浜を走り出す(スザクは飛んでいるが)


「ほんと元気ね、水の脅威を知らないのかしら」

「普段とは違う場所で興奮するのも無理ないと思うけどな」

「水を甘く見ちゃだめよ、痛い目を見る前にちゃんとしてほしいわね」

「あ、あはは…水の神様は厳しいですねぇ…」

「まああの子たちなら大丈夫そうね」


 セイリュウはあきれ顔だが元神だろうとあまり心配はして無いよう

 だ。


「そんなことより、前にテレビで見たんだけど人間は海に来たら『さんおいる』とやらを塗ると聞いたんだけど」

「えっ!?い、いやぁ…そうらしいが…」

「それを私に塗ってくれないかしら?」

「はぁ!?」


 サンオイルといえば海に来た女性が肌を守りながら日焼けをするために使用するものだ。

 そしてそれを塗るということは少なくとも相手の肌に触れるということだ。


「いやぁ…あいにくだがそれは…その、もってきてないからなぁ…」

「これだろ?持ってきているぞ」


 ビャッコが持っていたカバンから茶色い容器を取り出した。


「なんでお前が持ってるんだよ!」

「海にもっていく元の言えばってホワイトタイガーに聞いたらこれは持って行けっていってたから」

「あいつなんでそんなこと教えたんだ…」

「用意がいいわね。人がどんなものを使うか試したいからお願いするわ」


 そういうとセイリュウはうつぶせになり背中を向け、セイリュウの大きな尻尾とそのきれいな背中が露呈された。

 そして、その豊満な胸がうつぶせになったことでつぶれ背中から見てもはみ出して見えてしまっている。


「あ、えっと、本当に俺がやるのか…?」

「なにいってるのよ、背中はどうやっても塗れないでしょう?」

「ほら、貸してやるから手、だせ」

「いやいやいや、まてまて勝手に手に出さないでいただけます!?」

「あぁ、くどくどめんどうくさいわね、やってってお願いしてるんだからやってくれたっていいじゃないの」


 セイリュウは本気で興味を持って頼んでるみたいだが、ビャッコはからかいも半分に面白がってるように見えた。

 焦りながらも拒んでいるとセイリュウがその大きな尻尾で巻き取り引き寄せた。


「うわっ!ちょっと待てって!」

「さぁ、よろしくたのむわね」

「はぁ…しょうがない…じゃあ失礼して…」

「最初からそうしてくれればよかっ…ひゃう!?」

「え!?だ、大丈夫か!?」

「え、えぇ…大丈夫…感触が少しくすぐったくてびっくりしただけ…続けなさい!」

「あ、はい…大丈夫っていうなら…」

「…ひっ!…あ、ちょ、ちょっと、もうちょっとゆっくり…!くっ…」

「あの、本当に大丈夫か…?別にこれやらなくてもいいんだからな…!?」


 この後もセイリュウはサンオイルを塗り続けられたがその初めての感覚に悶え続けたのであった。




   #




「一応背中にだけは塗り切りきったが…あー大丈夫…?」

「え、えぇ…大丈夫よ!はぁ、はぁ…あ、あとは自分でやるから…大丈夫よ…」

「それならいいが…なんか、いろいろ危ない感じだったが…」

「セイリュウは園長のテクに堕とされたね…ふふっ」

「ビャッコ…頼むからそれは勘違いを逃れないことになるから誰にもそれを言うなよ?」

「はいはい、面白いものを見れたところでお前らも海に行ってくればどうだ?あいつらはもうお楽しみ中だぞ」

「そうね…水の神の本気、見せてあげるわ」

「青龍って水の神だったっけか?まぁいいか、俺も今日のために買った高圧式水鉄砲で暴れてやるか!」

「おー楽しんでおいで。荷物の安全は任せておけー」







 そうしてセイリュウと一緒に夏の海に繰り出したのであった。

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