一話 そうだ、出かけよう

 ここは一般の人は知らない場所にある和風の一軒家。

 そこには四神であるスザク、セイリュウ、ゲンブ、ビャッコの四人と、ほとんどご飯作る担当となったオイナリサマが暮らしている。

 七月の中旬、例年よりも気温が高くなりかなり蒸し暑い。

 エアコンも効いてるのか効いてないのかも分からないぐらい熱くなった茶の間にスザクを除いた四人がいる。



「はぁーー…」

 ゲンブは床に置かれたちゃぶ台に突っ伏し。


「あーーーーー」

 セイリュウは扇風機の前を陣取り。


「Zzzz……」

 ビャッコは眠っていて。


「あぁ、あつい…」

 オイナリサマは床に手をつきエアコンを見上げる。



 そんな夏の暑さにすっかりまいってる彼女らはまるで夏バテした夏休みの子供のようだ。


「なぁセイリュウぅ…冷蔵庫からアイスとってきてくれぇ」

「いやに決まってるでしょう…そんなの自分で取りに行きなさいよ」

「さっきから扇風機を独占してるんだからいいだろ…」


 ゲンブがセイリュウにそう頼むが、セイリュウも動かない。


「あぁもう、毎日こんな熱いなんて体が溶けてしまう…」

「いっそのこと溶ければ涼しくなるんじゃないですか?打ち水みたいなかんじで」

「オイナリも変なこというでない、というか溶けてもわしが涼しくないだろ」


 確かにこれで『ヒトの様な生活』は送れているが、如何せん神としての威厳はどこかに行ってしまったようだ。


「それにしてもほんとあついですねぇ…パークセントラル付近はサンドスターの影響が少なくて日本そのものの気候が適用されてるんですってね…日本ってなんでこんなに暑いんですかね…」

「ほんと、パーク内でも涼しい場所を求めて客はホッカイとかリウキウとかに足が向いてるみたいだな」

「意外と普通に涼しいみずべとかオアシスエリアには人は少ないみたいですね」

「客が少ないならみずべに水浴び行くのもいいわね」

「そうかセイリュウ、行ってくればいい」

「まだ行くとは言ってないんですけど…まず行くまでに暑いし動きたくないし」

「というか、いい加減扇風機を独占するのやめてくれません?それをどけが涼しくなると思うんですけどぉー」


 すっかりダラダラしている神様たちだが、ある一人。彼女だけは違った。


「おぬしら!!海に行くぞよ!!」


「「「は?」」」 「…?うみ…?」


 突然ドアが開き、そこにいたのはスザクだった。




   #




「海に行きたいとはまたいきなりですね…何かあったんですか?」


 オイナリサマがいきなり入ってきたスザクに対して疑問を投げかける。


「ほれ!今は夏じゃ!夏と言ったら海!青い空、白い砂浜、青い海!世の人々はこぞって海に言ってるぞよ!」

「なるほどね、スザクは海に行きたいってわけね」

「そうなんじゃ!人々がこんな暑い中遊びにいってるということは何か面白いことがあるに違いない!おぬしらも行きたいじゃろう?」


「却下だ」「遠慮しておきます」「右に同じく」


 スザクの申し出にゲンブ、オイナリサマ、セイリュウの順に否定された。


「えぇ~!なんでじゃ!」

「なんでこんな暑い日に出ていかなきゃいいんだ…人間ってのは時々おかしなことをを考える…」

「そもそも海ということはリウキウかしら?ということは客がいっぱいいる時期じゃない?なぜこんな時期に行くか知らないけれどそんな中に私たちが行ったら大騒ぎよ…」


 ゲンブとセイリュウは本気で行きたくないのかかなり強気に拒否をする。

 だがスザクは引き下がらない。


「いや、海は海でも他の者のいないぷらいべーとびーち?というやつじゃ、わしらしかおらんぞ」

「ならなおさらいかないわよ、人々がこぞって行く海を見に行くならまだしも誰もいないんじゃ行く意味もないんじゃないかしら?」

「なんでじゃー!ぬしらは何があっても行かないっていうのかや!?」

「ならあなた一人でいけばいいじゃないですか…私たちは留守番しているので」

「ぐぬぬ…」


 オイナリサマも却下側に回りついにはスザクは孤軍となってしまった。

 スザクは最後に残ったビャッコに助けを求めた。


「ビャッコ!おぬしはどうじゃ!?行きたくないかや?」

「……鍛錬を怠りたくないから、後寝たい…」


 ビャッコも否定側でついにはスザクは単独交戦となってしまった。


「はいはいわかりましたよ、ならおぬしらはここでダラダラしてればよい。海にはわしらだけで行くからの!」

「ん?わしら?」


 スザクの言ったことになにか引っかかったゲンブ。

 スザクはその反応にニヤリとした。


「あぁそうじゃ。この提案はあいつ…あの園長からじゃからな。奴曰く『ずっと部屋の中に引きこもってばっかりじゃつまらないだろうから、たまには外の出て体も伸ばすのもいいだろう』ってことらしい」


 園長という言葉が出たとたん、ほかのメンバーの目の色が変わった。


「それでわしらがいっても大丈夫なように、わしらだけの海を用意してくれたんじゃ。然かもそこはセルリアンの心配も無く安心して遊べるってことで誘われたんじゃがなぁ…主らがいかないのであればしょうがないからわしら二人だけで行くかのぉ…ふふっ」


 完全に攻守逆転したこの状況に、スザク以外の四人は明らかな焦りの表情を浮かべていた


「まぁどうしても行きたくないのであればしょうがない。あいつは悲しむじゃろうなぁ、でもわしがいるから大丈夫やな!それじゃあわしはこのことをあいつにつたえに…」

「それなら私も行きます」


 スザクが飛び立とうとしたとき、オイナリがそれを呼び止めた。


「ん?オイナリ、気が変わったか?さっきは遠慮するといっておったが…」

「えぇ、でも今の話を聞いて気が変わりました。あなたが一歩間違えたことをあの方としないように私が監視します」

「ふむふむ、理由はともあれオイナリは来るのじゃな、じゃあそう言うということで…」

「ま、まて!」


 今度こそ飛び立とうとしてしたスザクをこんどはゲンブとセイリュウが呼び止めた。


「お、オイナリが行くならわしも行くぞ」

「え、えぇオイナリがいないと私達が食べるものがなくなってしまうもの…」


 二人もそれらしい理由をつけていくことにしたそうだ。


「ゲンブもセイリュウも行くなら最初から言えばよかったのに…」

「園長であるあの人の頼みだったなら最初からそう言えばこんな面倒くさいことしなければよかったのよ」

「はいはいそうですねっと。で、ビャッコはどうするんじゃ?」


 スザクは最後に残ったビャッコに尋ねた。


「海…あんまり気は乗らないが、私も行く。一人で残っても何かできるわけでもないし。オイナリがいないと死活問題」

「ふむ、それじゃあ全員来るということでよいな。ではこんどこそ、このことを伝えに行くぞよ」


 そういってスザクは羽を広げ飛んで行った。

 セイリュウとゲンブとオイナリサマはそれを不満げな顔を浮かべ見上げていた


「まさか、スザクがあんな風に言ってくるとはおもわなんだ…」

「まんまとハメられたわね…」


 そんなこんなで四神達+オイナリサマの海に行くことが決まったのであった。

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