イラスト批評と「グレシャムの法則」

第19話 喫茶店にて

 外は日が落ちて、すでに空は青紫色に染まっていた。


 喫茶店の窓ガラスは鏡のように僕らの姿を映し出している。


 僕は内心困惑しながら、向かいの席に座っている少女をそっと観察する。長い髪を後ろで分けておさげにしている幼さを残した可憐な少女がそこにいた。ただしその目は赤く腫れて、さっきまでこぼれていた涙の跡がまだ残っている。


 その隣には、もう一人の少女が座っていて、おさげの少女を気遣うような目で見ていた。黒いつややかな髪を肩のあたりで切りそろえた彼女は、慰めの言葉をかける。


「そんなひどいこと言う人たちなんて気にする必要ないわ。もう関わり合いにならなければいいじゃない」

「だけど、そうもいかないんですよ。わたし、お姉ちゃんと同じ高校行くつもりですし、そうしたらまた顔合わせるかもしれないですし」


 しゃくりあげるような声で少女は答える。おさげの少女は日野崎巴ひのざきともえといって、僕のクラスメイトである日野崎勇美の妹である。


 隣で慰めているのは、同じく僕のクラスメイトであり親しい間柄の女友達でもある星原咲夜だ。


 僕も星原も巴ちゃんとはたまたま面識があって、特に星原はなぜか巴ちゃんに懐かれているらしく、たまにメールのやり取りをしているようだった。


 そもそもどうしてこんな微妙な空気の中、三人で喫茶店にいるのだったか。数時間前までは平和な日常を過ごしていたのだが。

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