Darkside Love

「ハァッ...、ハァ...、ハァ...」


嵐が過ぎ去ったかのような雰囲気だった。

僕はもうボロボロになっている。


野生の、興奮した動物を落ち着かせるのがこんなに難しい事だったのかと、思い知った。


いや、野生の動物と化した人間と言った方が正しいかもしれない。

闇雲に肉を食い散らかす動物とは違い

感情、言語、心理、発達した脳を持つ

人間と動物のハーフは、とても恐ろしい物だった。

だけど、

彼女は...、僕の友達(フレンズ)だ。



何よりも彼女、いや、僕達を取り巻く環境を変えたのは、あの事件だろう。


アライさんが病かかってしまった事件だ。


ラッキー曰く、かつてこのパークには“獣医”と“医者”で組まれた特別な医師団が在中していたとのこと。


しかし、フレンズしかいない今では

薬を見つけ、進行を遅らせる事が精一杯だった。


アライさんを苦しめた病気は、

これまたラッキーの見立てだが、

免疫が弱まる病気らしい。

その病はかなりレアな部類に入り、

フレンズに感染するケースは物凄く低い。

そんな病気にアライさんはかかってしまったのだ。


その病気の感染ルートを独自で調べると驚くべきことがわかった。


具体的に説明は出来ないが、フェネックが関わっていた。

通常ヒトの持つ病がどのように彼女に

寄生していたのかは不明だが、

彼女とアライさんの間でその病の感染ルートが出来上がってしまい結果として、アライさんだけが病気になってしまった。


彼女は悲しみ、後悔した。


自己中心的にアライさんに関わり、

病気にさせてしまい、そして、苦しませていること。


“自分は悪魔だ”と言うまで追い詰められていた。

アライさんは日に日に衰弱していった。

末期は健気に走り回っていた頃が嘘のようだった。

最後に彼女は、フェネックにこう言い残した。


『一番のおたからは、フェネックなのだ...、フェネックに会えて、本当に良かったのだ』


僕はこの時、生と死について初めて

ハッキリと認識させられた。


アライさんの死をきっかけに、

フェネックは崩壊していった。


その余波は、僕達にまで...



私はアライさんを死に追いやったという

事実を抹消したかった。

記憶の“焦げ”を削ぎ落としたかった。


博士の助言、図書館の本


ありとあらゆる手段を使って情報を集めた。


そして、やっと見つけたもの...

これで、全てを忘れられる。


そう、思ったんだ。



僕は彼女の異変に真っ先に気付いた。


「...フェネックさん?」


彼女はぼーっと、魂を抜かれたように

灰色の空を眺めていた。

普通なら、すぐ気づく筈なのに、彼女は

気付かなかった。


「フェネックさん」


もう一度呼びかけるとこちらを見た。


「なに?」


「どうしたんですか?」


彼女は再度空を見つめた。


「...ヘビが泳いでたから」


「え?」


「なんでもない」


そう言って、どこかへ行ってしまった。

僕は彼女がとても気になった。

だから、様子を見守ることにした。



すごい・・・


アライさんなんて忘れられる。


きもちよくなって...


その声は誰なのかな


アライさん?


・・・やめてよ。

なんでよ。


私は....


アライさんなんて忘れたいのに!


やめてやめてやめてやめてやめて!!


誰なんだよお前は!!




フェネックさんが、フェネックさんじゃない奇声を発した。


僕は彼女を、見捨てる訳にはいかない。


彼女を救えるのは、僕しかいない。


「どうしたんですか!!落ち着いてください!!」


「やめてよ!離してっ!!」


フェネックさんを必死に抑えた。

物凄い力だった。

時々聞こえる低い唸り声は、おぞましいものだった。


僕は、腕に傷を追いながら、フェネックを宥め続けた。

僕は黙って彼女の頭を撫で続けた。


次第に彼女は泣き始めた。

感情の起伏が、激しくなっている。


そう感じた。


彼女が落ち着くのを待って話を聞いた。

かなり時間がかかったけど、僕は怒りも責めもしなかった。


「フェネックさん、どうしたんですか…」


「アライさんを...忘れたくて...

図書館で色々調べたり...して...」


あんなにメソメソしてるフェネックを見るのは初めてだった。


「植物を見つけて...、紙で巻いて...、火を見つけて...」


彼女の話をまとめると植物を燃やしたのを吸った。ということらしいが、僕にはさっぱりわからなかった。

けど、感情の起伏が激しくなるのに関係があるんだったら、厄介だなと、僕は思った。


「やめましょう...、そんなもの」


彼女は悔しそうに唇を噛み締めていた。


「ごめんね...、ごめんね...」


顔を涙で濡らしながら、僕の服に顔を埋めた。


ーーーーーーーーーー

《作者より》

この作品ウケるんじゃねと思っていた時期が私にもありました。

あらすじとしては、アライさんを亡くし自暴自棄になったフェネックが大麻に手を付けてそこからかばんが彼女を立ち直らせて行くという展開でした。面倒くさくなって書くのやめました。はい。

因みにアライさんがかかった病はエイズです。後、サーバルも一応出すはずだったのかな...?


合掌( -_-)/Ωチーン



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