特異な存在


“またあの山が噴火してるよ”


“今度はどんな子が生まれるんだろう?”


密林の中から声がする。

山から降り注ぐ固形物は行先を知らない。

全て“運任せ”である。

時に、動物を変化させ、“ヒト”を生み出すその怪異とも言える物体が、天から落ちるのだ。


その固形物がこのジャングルにも落ちてくる。


ボチャン!


物体は川に落下した。

しかし、世の中都合よく物事が進むとは

限らない。予想外の裏切りもある。


結果、特異な存在を生み出してしまうのだ。




朝、頭を撫でながら川の中から出る。


「ってー...」


初めて見たかもしれない、外の世界

しかし、感動よりも先に自分の置かれた状況が理解出来なかった。


「俺、どうなったんだ...?」


昨日までは水の中を泳いでいたが、

今日になり、突然二足歩行を始めた。

困惑も当たり前だ。


「....」


何をすればいいのかわからなかった。


「わーい!」


遠方で声が聞こえた。

何か知らないが、行ってみることにした。


朽ち果て折れ曲がった橋を滑っている。

あれが楽しいのだろうか?

自分には理解できない。

そんな様子を無意識に鑑賞していると、

此方と目が合った。

“気まづさ”という物を初めて知った。


「あ!あなた誰!?」


物凄い勢いで川の水を掻き分けこちらへ来た。とてつもなくパワフルである。


「あっ...えっと...その...」


顔を見ると、初めてみた顔ではない。

ぼんやりとモザイクがかかっているが

間違えなく前にどこかで出会っている。


「わたしっ、コツメカワウソ!君は?」


自分?

尋ねられて一瞬戸惑う。

だがこういう時は冷静に考えるのが得策だ。


ヒントは、水を泳いでいた。


「あれ?もしかして、かばんみたいに誰かわからないの?」


彼女の発した“かばん”という名前。

すごく気になるが、今では考えを妨げる障害物でしかない。

聞き流し、思い出す。喉の辺りまで常に出かかっていた。


「あーっ、ああ、思い出しそうだ。

えーと、ピ、ピ....、ピラルクーだ!」


あれ?でも、おかしいぞと思ったのは

後の祭りだった。かつて誰かから聞いたのだろうか?にしても、誰だかわからない。自分のこと以外が謎だらけだ。

きっと、さっき彼女が口にしていた

“かばん”とは真逆のパターンなのだろう


「ここは?」


「ジャパリパークだよ」


何だそれは。

率直な感想がそれだ。


「ところでさ、ピラルクー?

君、なんか変じゃない?」


彼女に指摘された。

頭に疑問符を浮かべる。

変?何が変なのだろうか。

変なのはこの周りであろうのに

なぜ自分なのか。


「おーい、コツメカワウソ」


川から声が聞こえた。


「あっ、ジャガーちゃん!」


大きな木を引っ張りながら、川を泳ぐ。

これにも既視感があった。


「あれ、そこの君は?」


「ピラルクーだって!」


ジャガーと自分の目が合う。

彼女は不思議な目でこちらを見つめた。

やはり、自分は何処かが変なのだろう。

特異な存在であるのか。


彼女は岸辺に木を置き、此方へと近付いた。

「君は、昨日のサンドスターで生まれたのかな?」


「サンドスターってもんがよくわからないけど、たぶんそうかもしれない」


曖昧な返事を返した。


「なんかさ、変じゃない?」


コツメカワウソが先ほど自分に言った事をジャガーに尋ねる。

彼女も気になっていたようで、自分の姿をまじまじと見つめた。


「確かに、何か全然わからないけど、

何かが変だね」


やはり、変と言う。


「何処が変なんですか」


「そうだ、君、図書館に行ってみなよ。そこに行けば、何が変なのかわかると思うよ!」


図書館。

また新しいワードだ。しかし自分の何処が変なのか知るなら、行く価値はあるだろう。


「じゃあ、行くよ」


「わかった。途中まで案内するよ」


ジャガーがそう言ってくれた。

木の所に乗れと言われたので、乗った。

ジャガーに乗せて貰い対岸へと向かった。


「...なあ、ジャガー」


「ん?」


彼女が後ろを振り向いた。


「どこかで見た事がある。君を....」


「...そう?」


「お、おう...」


「うーん、全然わからんけど、私もなんか君に見覚えあるなぁ...」


自分は上の空を見上げる。

ゆっくりと流れる雲。


(自分ってなんだろう)


そんなことをぼんやり考えてると

いつの間にか対岸に付いていた。


「付いたよ。ここからはー、えーっと...、あーっ...、ごめん。他のフレンズに聞いてもらえるかな?」


「他のフレンズ...、わかった...」


「本当は一緒に行きたいけど、仕事があるからね...、ごめんね」


「全然いいよ。気にしないで。

何かわかったらまた伝えに来るよ」


「そうだ、こうざんにカフェがあるんだ。折角なら飲んで行きなよ」


ジャガーはそう提案した。


(カフェか...)

どんなものか想像つかなかった。


「おう、わかった。ありがとう、ジャガー」


そう礼を述べて、俺はこうざんへ向かった。


ーーーーーーーーーーー

《作者より》

シリーズ予定化作品でした。

何故魚類のフレンズは居ないのかという疑問から発想を得る。男子のフレンズピラルクーが旅する内容です。ジャガーさんと親密な関係になるって言うのもいいかな、なんて思ってました。因みに容姿は銀髪に白いアロハシャツ、短パンにビーチサンダルという格好です。カップリングするとしたら誰がいいっすかね...?ピラルクー君を生かせる人いたら生かしてください。合掌( -_-)/Ωチーン


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