Abnormal
いつもどおり
私は『イシスローディア』に住む15歳の少女で、名はリーゼ・トステト(この星でのスペルではLirz・Tostotだが、こちらの言葉は大分英語に近い)という。
私の親は、父が有名な科学研究者で、研究者の中でもトップクラス。地球でノーベル賞に値するMPOC(Most Proud Of the Content)賞をある研究で受賞している。そして、母があの地球へ調査員を送っている調査局の局長。そして、二人とも容姿にも恵まれている。勿論、そんな二人の間にできた子である私もその恩恵を十二分に受けていて、テストでは満点で学年一位となり、成績も良く、見た目も、綺麗なさらさらのロングヘアーにユリのような白い肌、そして整った顔、すらっと長い手脚。更に、街を歩けばスカウトとナンパ、学校では羨望の目とラブレター…という具合だった。そんな私の家族を近所では『恵まれた美しい家庭』と呼んでいた。さて、話は変わるが今私は姿を変えることができる能力、『変身』を手にしたのだが、突然の事なので少し混乱している。整理する為にも今日1日、朝から今までの事を全て細かく話そうと思う。
今朝いつもと1秒も遅れずに起き、白と蒼色を基調としたスッキリとしていて且つメカニカルな印象を与える完璧に私の趣味で染められた私の部屋に蒼に白の細い縦のストライプのカーテンを引いて早朝なのに明るい初夏の朝日を取り込み思いっきり伸びをして夜を振り払い、親(主に母)の好みのモノトーンの家の階段を降り、リビングルームを通る。そこのテレビではいつもニュースが流れていて、今日のニュースでは本日のオークション会場と時間を各地域ごとに表示していた。そう、冒頭で言うのを忘れていたが、イシスローディアでは諸事情あってネットオークションは出来ないのだ。諸事情は後でわかると思う為後回しにして、リビングルームの隣にある洗面所で顔を洗い、学校の制服に着替えて学校指定の黒に灰と白のストライプが斜めに入ったネクタイを緩まないようにしっかりと締め、リビングのテーブルの席に着くと、ピシッとした紺のスーツを着た父が階段を降りて来てテーブルの席に座ると、出来たての目玉焼きとベーコンとサラダ、そしてほかほかのご飯が私と父と母の3人分、プレートに乗せられ、美味しそうな良いにおいを漂わせながら母と共にやって来た。私は父と母に今日のオークション会場と時間を教えると父の研究についての話し合いをしつつ朝ごはんを食べた。父の研究は今、人の能力の1部を大幅に成長させて超能力者を作るというもので後一歩で完成するそうだ。これが完成してしまえば、今年も受賞者は父だろう…私も被検体なのだから完璧にお願いしたい…そして家を出ると、名門ゼオン高校の制服を校則スレスレの範囲で着崩し、水色の髪を地面スレスレの長い三つ編みにしている手脚が白く細長い少女が立っている。
「リーゼ!!おっはよ!いつもと1秒も変わらないね!!ところで、また手紙預かったけど中覗いたらやっぱりラブレターだったし、廃棄処分でおけ?」
「レックスおはよう…一気に話されても困るって…言っても変わらないか…ラブレターはいつも通り廃棄だよ…」
レックス・テンダー(Rex・Tender)は私の唯一無二の親友だ。中学の時、好きなゲームの推しキャラで意気投合し、性格は大分対照的だがそれがとても丁度よく、私が学校でぼっち飯をしていた所に突然やって来てからずっと一緒だ。実はレックスも明るすぎる性格の所為で友達がいなかったとか…。
そんな明るいレックスと喋りながら学校へ行くと下駄箱の中にラブレターがぎっしり…なんて言うのは漫画やアニメだけ。実際入っているのは少量で、それも名前だけ確認して廃棄処分。教室へ行き、机の中…には入らないように教科書がぎっしり。持ち帰るのは復習したい教科のみでその他は置いて帰るのが私スタイル。なのだけれども、根性のあるやつは無理やり教科書の間に入れてくるため、それも名前を見ていつも通りの奴か…と、廃棄処分。レックスはその紙を破く時、とても満足そうな顔になる。何でも、どうせこうやって捨てられるのに、態々書くなんて馬鹿らしくて仕方ないらしい。「嫌なんてぜっんぜん思ってないよ!?逆に、何でこんな事嫌だと思うの?ストレス発散も出来るのに~」と言われてしまった。ストレスなんて無さそうなのに…。「ねえねえ聞いてた~?」突然の明るい声。驚いて少し飛び跳ねてしまった。
「聞いてなかったでしょ?ああもう、昨日のアプデであのキャラクターのセリフが新しく追加されたの!!!知ってる~?すっごいよくないあのセリフ!」レックスの説明のとき話した推しキャラのあのゲームの話だ。
「聞いてたよ~良いよね~分かる!あれでしょ!あの…ほら!『全部ぶっ壊してやる!全て、この、いつも通りの平和の為に!』て言うあれ!」
そんな話をして過ごすうちに先生がやってきて「ほらそこの男子!席に着けー」という声が聞こえてくる。私達も静かになり、席に着く。そして、いつも通りになる筈だった学校の朝が始まったのだ。
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