第27話 パーティーメンバーが揃った
「よぉー。やっと治ったか遅いぞ!」
ロイドが長身の青年······カイの背中を強く叩き、喜びに破顔一笑する。カイは叩かれた背中を気にしながらも、ロイドと談笑を始めていた。
そう。今日はカイが退院する日だ。俺たちのパーティーメンバーであり、防御の要でもある。カイが復帰したからには、すぐにでもダンジョン攻略が再開されるだろう。そうすれば、少しでも下の層に行けるようになる。
待ちに待った日の到達に、俺は浮足立っていた。
「アイク。あいつら、仲いいのか?」
「はい。元々同じ村の道場の生徒だったみたいです。ロイドからすれば、カイは兄弟子なのでしょう」
ロイドだけじゃなくて、カイまで武術をやってたのか。一度ロイドと手合わせをしてみたんだが、一度も触れられずにコテンパンにされたから、怖いわ。カイってあれ以上に強いの?
あれ?俺が入ったパーティーって、実は有力だったり?
いや、スキルランクが低いから、前提的な限界は案外近いのか。
「ロイドは相変わらずですねー。カイが復帰して、元気百倍になってますよ、あれ」
ロイドは普段から元気······というか、武人的な覇気があるが、確かに今日はいつにも増して元気に溢れてるなぁ。
そして、アメイラも人のことが言えないくらいには元気だろう。
「アメイラ?何かあったの?」
「え?!いやいや。何でもないですよ。カイが戻ってきて、嬉しいだけです」
アイクの質問を華麗に躱したな。カイが復帰したことに喜んでるのは本当だろうけど、実際は違うだろう。アメイラは、ダンジョン攻略の再開によって収入が増えることが嬉しいのだ。エイラの病気は進行する一方で、定期的にあのポーションを買わないといけないみたいだし。
で、何でアイクは俺とホムンクルスにだけ敬語なんだろう。
「あなたがシオンさんで宜しいのですよね?」
「あっ、ええと、そうだけど」
ロイドとの会話に一段落がついたのか、カイは俺のもとに来て確認をしてきた。俺が助力に入ったときには、カイの意識は朦朧としてたから、俺のことが記憶にないんだろう。
「あの時は、本当にありがとうございました」
頭を下げようとするので、無理矢理言葉を重ねる。
「いや、もう沢山お礼はしてもらったし、ついでにパーティーにまで入れてもらってるし、そういうのは良いって」
「そうですか······」
「あと、できれば敬語は無いほうが話しやすい」
カイは一瞬間を開けて黙り込み、そして頷いた。
「そうか。じゃあ、これからよろしく頼む」
「こっちこそ」
カイは満足そうに笑うと、握り拳をオレの前に突き出してきた。はは。喋り方だけじゃなくて、こんなところまで武人らしいやり方だな。
内心そんなふうに思いつつも、俺は拳を突き合わせた。
そして、カイの視線がホムンクルスに移る。
「君も、これからはよろしく頼む」
「ダンジョンは危険だから、助け合うのは当然のこと」
「······?」
あ、いけねぇ。カイが首を傾げちゃった。ホムンクルスの言葉って、聞き手によっては突き放すようにも聞こえちゃうから、やり辛いんだよなー。
「ごめんね、カイ。僕と連携の練習をしていたときも、この子の口調はこうだったんだ。多分、元からのもので、悪気はないんだと思うよ」
「そう、なのか?」
しばらく悶々と悩んでいたカイだが、ロイドに「仲間くらい信じろバーカ」とケツを蹴りつけられ、納得したようだ。ホムンクルスにも拳を突き出し、そして······ガツン。
割と遠慮の無いホムンクルスのパンチをもろに受けてしまい、拳を押さえて痛がりだした。その様子を見て、俺達はついつい笑ってしまう。
「見た目によらず、凄い怪力だな?!ステータスが高いのか?ていうか、君、なんて名前だ?」
「私は······」
ホムンクルスは口を開き、案の定返答に困り、俺を見た。その視線には、気のせいか"どうすればいい?"という感情が乗っているように感じる。
「カイ。こいつは、俺が知り合いから預かった奴隷なんだ。名前は付けてない」
「―――――っ! ま、まぁ、人には事情がある。下手には踏み込むつもりはないが、ちゃんと生活させているよな?」
当たり前だ。そう答えようと口を開くが、アメイラに先を越されてしまった。
「凄いんですよ、シオン君のその子への執着。ご飯は三食食べさせてるみたいですし、洋服だって最低限は買い揃えていて、しかもお小遣いまであげてるんです」
「「「······」」」
今の情報は、エイラの"だれかと一緒に住んでたりするの"という質問に答えたときのものだ。その場にいたアメイラも聞いていたんだろう。だが、ロイドとアイクは知らない。
カイを含めて、三人揃って俺を凝視してきた。
「何だよ?」
「お前、こいつのこと好きなのか?」
「いや。別にそういう訳じゃないけど」
「おいおい、本当かよぉー?じゃなきゃ、酷い言い方だけどよ。奴隷にそうまでしないもんだぜ?」
ロイドがニヤニヤしながら話し掛けてくる。あーこれ、あらぬ誤解を生んだな。
取り敢えずアメイラを睨み付けると、ペコリと謝られた。だが、下げた顔が笑いを抑えているのが見えている。後でシバくか。
て、アイクはアイクで分かってます風に頷くし、カイなんかはホムンクルスに「良い主を得たな」とか言ってるし、やめてくれよ。
「あのなぁ?!」
俺の弁明は、アメイラが「何時になったらダンジョンに行くんですか?」という質問をするまで続いた。
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