第3話
「あの、こんな所で何をされていたんですか?」
少し落ち着いた後、少女がおれに問いかけてきた。
見た目は完全に外国人だが、日本語を喋っている、
この世界の言葉は日本語…?
いや、今はそれより、
異世界のことを言うべきか?いや、まだこの世界のことは何もわかってないしな…
おれは異世界のことがこの世界ではどの様に扱われているかが心配になり、真実はまだ言わない事にした。
あるゲームのストーリーでは、異世界人は敵だ!て感じでかなり目の敵にされてたからな~
「あーちょっと遠くの方から来ていて、迷っちまってな」
「歩いてですか!?」
少女が目を見開いておれを凝視してくる。
しまった、そんな遠くからこんな危ないとに歩いて来るわけないよな。
「あー、移動手段は魔物に壊されてしまってな」
ここは適当に流しとくか。
「そうだったのですか、それは大変でしたね、この辺りに来ると言うことはこの先の国に行くおつもりなのですか?」
「え!この先に国があるのか!?」
(そうか!やっぱり人の国はあったんだな!!)
「この先の国のことを知らないのですか!?そ、そうですか…!」
かなり驚いている、結構大きい国なのかな?
ん?少し嬉しそうなのは何でだ?
「ああ、かなり田舎の所から来たからな。でも国があるなら行ってみようと思ってるよ。」
国に行けばこの世界のことを知ることができるだろうと、考えていたからだ。
「そうですか、よ、よろしければ歩いて行けない距離では無いですし、国に着くまで私と一緒に行ってもらえませんか??」
少し人見知りなのか、少女がもじもじしながら恥ずかしそうに頼んできた。
(まじか!これはかなり嬉しいイベントだな!)
旅のお供にしては可愛すぎるけどな、
「ああ、勿論だよ、よろしくな!えっと…」
「ティアです!ただのティアです!」
顔を近づけて熱心に言う、ティアと名乗る少女、
「そ、そうか」
何で二回言ったんだ?そしてなんで嬉しそうなんだ?まあ、いいか。この子の笑顔を見れるだけで元気が出てくるし。
「おれは達也だ、よろしくな!」
「はい!よろしくお願いしますね!タツヤ!」
それから、
おれとティアは少しの先に大きい道があるということでその道に沿って国まで行くことにした。
ティアは16歳でおれと同い年だった、背が少し低いので少し下かな?と思っていたが思いもよらないナイスバディに納得せざるを得なかった。
(てか、可愛いな!!)
さっきまでは国のことで驚いたりしていて、あまり見ていなかったが、ティアはものすごく可愛かった。
日本人では見れない腰の辺りまであるストレートのブロンドヘアーに青く輝いた目に、顔は小さく整っていて、どこか幼さを残していた。
そして、話し方はとても上品で、まるでゲームに出てくるお姫様みたいだった。
「そういえば、ティアはなんでこんな所にいたんだ??」
おれは、ふと気になって尋ねてみた。
「えっと、隣の国に用事がありまして、その帰りに私も馬車を魔物に襲われてしまって、ごえ…仲間とはぐれてしまったのです。」
国はこの先の国だけではないのか、
てか、この世界って道にそんなポンポン魔物がでるのかよ!大丈夫なのかこの世界…
そんな事を考えていると最も聞きたかったことを思い出した。
「なあ、ティア。さっきカマキリを倒したのって…」
おれが、恐る恐る聞いてみる。
「?魔法ですか??中級の魔法ですし、あまり珍しいものでもないと思いますけど。」
ま、魔法!そうか!やっぱりあれは魔法だったのか!!
おれのやっていたゲームとは何処か違う感じだったけど、魔法はやっぱりかっこいいよなー!
おれはここで異世界物語のお約束を思いつく。
あれ、もしかしておれも使えるんじゃね!!??
「ティア、魔法について少し教えて貰えないか?」
おれは興奮を抑える様に聞く。
「えっと、魔法についてあまり詳しく無いのですか?」
「おれが住んでいる所には魔法は使われてなかったからな…」
まあ、嘘はついていないからいいだろう。
「いまの時代にもまだそのような所があるのですね…わかりました!えっと、、、」
ティアによると、この世界の魔法は、
火、水、木、光、闇、無、そして回復、そしてそれぞれの属性は初級、中級、上級、神級があるらしい。
魔法は詠唱中に頭でイメージを作り出し、魔法名を声に出すことで、自分のなかの魔力を使い発動できるようで、魔力の内容量には個人差があるという。
ゲームでいうMPだな!
そして、なんでもイメージがとても大切なようで、頭のなかでイメージを作り出すために詠唱を行うらしい、位が上がるにつれて詠唱が長くなるのは、魔法の影響力が大きくなるため、イメージするのが困難になるからだそうだ。
そして、この世界の人々は本で見る以外に魔法の新しいイメージを作り出すことは出来ないという。
そんなことしなくても魔法をイメージくらいできるんじゃないか?あのゲームの魔法なら見過ぎてイメージとか簡単に出来るんだけどなー
とも思ったが、この世界ではそれが普通らしい。
「そして、詠唱省略というものがありまして、
頭のなかでのイメージを少しの詠唱で作り出すことができるようになれば、詠唱を省略して、魔法を発動させることが出来るのですよ、でも、これが難しくて…」
ティアは攻撃魔法は中級の一つの魔法しか詠唱省略出来ないものの、回復魔法なら上級まで全ての魔法を詠唱省略出来るそうだ。
一般の魔法使いは魔法を一つの詠唱省略出来るくらいらしく、ティアがすごいことはよく分かった。
「そうか、、ティアはすごいんだなぁ」
「ふぇ!?いえ、そんなことはありませんよ!
まだガーネットですし…」
ティアが恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「ん?ガーネット?何のことだ?」
「ええ!?七つの宝石のことも知らないのですか!?」
「すまん…」
おれは教えて下さいと頭を下げて言った。
「あ、いえいえ!誰にでも知らないことはあると思います!!そうですね、、、」
この世界の生物には潜在的な能力の上がる限界値のようなものがあって、その限界値の壁を壊すにはその時点での生物にとって、危機的状況や、自分より上の存在に勝つことにより、その壁を壊せるらしい。
その限界値の壁は七つのあるらしく、宝玉の台と呼ばれるらしいもので見たときに丸い石のようなものでそれが表されているらしく、突破すると、その石が光って行くそうだ。
簡単にいうとレベルだな!
そして、その名称が、
最初の方から、
アメジスト
ガーネット
トパーズ
サファイア
ルビー
エメラルド
最後にダイヤモンド
と呼ばれているらしい
なるほど、それで七つの宝石か、、
一つも壁を突破していない者はコモナーと呼ばれているらしい。
一つの壁を壊すごとに大きく能力が強化されるようで、筋力や瞬発力だけではなく、魔力量や、魔力適正(魔法を使うための適正、大きく個人差があり魔力適正に見合っていない魔法を使おうとすると、よっぽどじゃ、発動しないらしく、無理に発動させようとすると身体に異常が起こるらしい。)も上がるそうだ、
その恩恵は絶大で、才能で劣るものでも、才能があるものより一つ越えるだけで力の差は一気に開くらしい。
要はレベルアップみたいなものだな!
壁を壊すことによって得られる恩恵はそれだけではなく、エクストラスキルというのを一つの壁につき一つ獲得できるらしい。
そのエクストラスキルはその物のいまの状況で最も必要なエクストラスキルを得られるようで、位が上がるほど強力なエクストラスキルを得られるようである。
ティアは、
【水の心得】と【回復の波動】というエクストラスキルを取得したそうだ。
【水の心得】はそのまま水魔法が得意になるそうで、
【回復の波動】は回復魔法を飛ばして使うことが出来るようになるらしい。
回復魔法を飛ばすのか、それはゲーマーから言わせてもらえばかなりのアドバンテージになるな、
「ティアはいまガーネットだから、二度もそんな状況から脱したのか、すごいな!」
「い、いえ、私はアメジストになるのもガーネットになるのもとても早くて…誰にも言わないでくださいね…?アメジストは三歳の時に木から落ちそうになった時に運良く下にマットが飛んできて助かった時にアメジストになって、ガーネットになった時は森で魔法の練習をしていた時に、魔法を連発していたらたまたまそこを通っていた魔物に全て当たって運良く倒せて、ガーネットになりました、、。」
ティアは説明しながらどんどん顔が下がっていき、ついには下を向いてしまった。
しょぼかった、、想像を遥かに超えてしょぼかった。
「げ、元気なお子さんだったんだな!!」
「やめてええぇぇえ!!」
ティアが恥ずかしそうに顔を赤らめて手で顔を隠していた。
もうティアのライフはゼロだった。
==============
結構な距離を歩いたな、、
おれはへとへとで今にも足がぐらつきそうなのにティアはまだまだ余裕という表情だ。
(こ、これが七つの宝石の力か、、)
決しておれの身体がひ弱なだけでは無いと思いたい。
そんなことを考えているとティアがおれの様子に気づいたようで、ニッコリと笑みを浮かべながら
「少し休みますか?」
気を使わせてしまったな、、女の子に気を使わせてさらに自分のせいで国に着くのが遅れるなど
言語道断!!と言いたかったが、学校の体育でくらいしか運動をしていなかったため素直に休むことにして、少し開けたところで切り株に座った。
「魔物に出くわすと思っていたけど案外出てこないんだな。」
達也たちはここまで歩いてくる中で一度も魔物に遭遇しなかった。
「ああそれは、、」
とティアは言って襟に手を突っ込んで首から下げた、ペンダントのようなものを見せてくれた。
「これは『魔除けの印』といって、半径20メートルまで、最初からその中にいた魔物と、特殊な魔物以外を近づけない、というものなんですよ。」
とティアは教えてくれた。
「特殊な魔物??」
「魔物についてもですか?」
「教えて下さい先生」
「先生!?」
もうおれはティアには頭が上がらなかった。
魔物は強い方から
A.B.C.D.E.Fに分かれているらしく、この森は大体
E~Fの魔物が出るらしい。ちなみに、さっきのカマキリ、正式名称クワトロサイカーはEランクだそうだ、
そして特殊な魔物というのは七つの宝石をいくつか取得し、エクストラスキルを持っている魔物の事らしい。
エクストラスキルを取得できる魔物は大体が知性のある魔物らしく、て、え!?知性のある魔物?
そんな魔物がいるのかぁ、会ってみたいな!
知性の無い魔物がたまたまエクストラスキルを取得してしまう事がほんとに少しの確率であるらしく、その魔物はランクが高いらしい、ティアはその魔物によって仲間達とはぐれてしまったそうだ。
「てことは、この辺にまだそいつがいるかもしれないのか?」
「可能性はありますね。」
まじか、さすがにこのままじゃやばいな、
「なあ、ティアおれに一番簡単な魔法でもいいから教えてくれないか?ほら、そいつが出てきたとき少しでも牽制になるかもしれないだろ?」
「そうですね、確かに……わかりました!じゃあ初級魔法の『フレアライト』を教えますね!!」
ティアは少し考えた後そう言っておれに魔法を教えてくれることになった。
正直かなりワクワクしていた、なぜならおれはどんなゲームにおいても、職業選択があるなら迷わず魔法を使える職業を選ぶほど、魔法が好きなのだ、
人の身では絶対に出来ない圧倒的な魔法の魅力におれは惹かれていた。
それを実際に使えるというのだ、ワクワクしないはずが無いだろう!!
ティアが教えてくれるという初級魔法『フレアライト』は、指の先に火を作り出しそれを打ち出すというものだった。
ティアに見せてもらうと、子供の時にやっていた
鉄砲ゴッコを思い出すような撃ち方で、ティアがやるととても可愛かった。
初級というだけに威力はあまり強くなさそうだ、
「詠唱は、『我が指に炎を収束し撃ち放つ』です
イメージは自分の指先から炎を出して、それを集めて小さな球を作るかんじです!やってみて下さい!私は教えてもらって五分くらいで出来るようになったので、タツヤさんならもっと早く出来るようになると思いますよ!!」
えー!?恥ずかしいんだけど!!詠唱とかしないといけないの!?そういえばおれのやってたゲームに詠唱とかなかったなーーー
でも、仕方ないか…
おれは諦めて素直に詠唱を行う事にした。
ようし、この世界に来て初めての魔法だ!やってやるぜ!!
おれは、この世界に来て一番のやる気を見せていた、こんな事になるとは知らずに、、、
プシュ~~
おれの指先からそんな音を立てて煙が出ている。
、、、もう一度だ
プシュ~~
==========
10分後…
プシュ~~
「ひ、人には得意な事と不得意なことがあると思います!!不得意なことが出来ないのは当たり前だと思います!!!」
ティアが真剣な顔で慰めてくれていた。
ほんとにいい子だ。
「はは、いいんだティアありがとう。
おれは駄目みたいだ、いままでありがとう。」
異世界に来たのだから大抵すごい力を持っているだとか思っていたんだけどな……
「何を言っているんですかぁ~~!!!」
魂が何処かに行こうとしていたおれをティアが顔をペシペシ叩いて戻してくれた。
それにしても、まさかここまで魔法が使えないなんて、、、でも、正直、理由のようなものは分かっていた。それはイメージ力だ、この世界の人は日常でも魔法を使うため、魔法に触れる機会が多く、子供の時にイメージはすでに出来るようになってくるらしい。
おれは、この世界の魔法を見たのはティアのが初めてで、この世界の魔法というもののイメージがまったく掴めないでいた。
(くそ、ゲームの魔法なら完璧に覚えてるのになぁ)
「では、そろそろ行きますか??」
「そうだな、、、いくか!!」
おれは気持ちを切り替えて、国を目指すことにした。その時だった、
おれとティアの視界に黒い影が映った。
おれとティアが同時に振り向くと、
4メートルほどの人型の大きな体に、二足歩行で手は4本生えており、その全てがカマになっていた。顔はカマキリのような顔をしていて、実に気持ち悪かった。
「こ、これは、達也さん、こいつです!
こいつが、エクストラスキル【獣人化】を取得したクワトロサイカーです!私たちの馬車を襲ったのもこいつです!」
ティアが言ったその特別なクワトロサイカーは
明らかにおれが見て来た魔物とは風格が違った。
おれが太刀打ちできるような相手ではないこはすぐに分かった。それはティアにも分かっているらしく、
「タツヤさん!私が時間を稼ぐのでそのうちに逃げて下さい!」
ティアがそんな事を言っていた。
少し震えているのを隠して…
おれだけ逃げる、、確かにいまの状況では二人ともが逃げるのは無理だろう、
(でも、ティアを置いて逃げるのか?そんな事を出来るわけ無いだろう!くそ、どうすればいいんだよ!!)
そんな事を考えているうちにティアとクワトロサイカーが戦闘に入ろうとしていた。じりじり、と距離は詰まって行く
その時だった、
ティアがおれに、優しい声で、
「少しの間でしたけど、 話せてとても楽しかったです、ありがとうございました。」
と言って最初に出会った時と同じ顔で微笑んでくれた。
その瞬間おれは決意した。
(どうせ一度死んだ命だ、恩人のために死ねるならそれでいい!!)
そう思って達也は自分のできる事を探した、
しかし、、、
くそ!何もできねぇじゃねぇか!!
クワトロサイカーと戦闘をしている。ティアは氷の槍をクワトロサイカーに向かって撃っているがその全てをカマで壊されていた、ティアがクワトロサイカーの振ったカマを後ろに避けた時に
ティアは後ろにあったいしにつまずいて転んでしまう。
やばい!!!
「くそ!我が指に炎を収束し撃ち放つ、フレアライト!!、、、くそ!なんで出ないんだよ!!」
クワトロサイカーがティアに向かってカマを振り上げていた。
おれは最悪な状況に頭が真っ白になった、
しかし、真っ白になった頭の中で、
いつも見ていた魔法を思い出していた。
それは、おれがゲームのなかで見ていた魔法だ。
達也はイメージした、ゲームの中で毎日のように使っていた魔法を、今はそれが一番必要な気がしてならなかったからだ。
そして、頭なかで完全にイメージを整えた時、
達也は手をクワトロサイカーに向け、いつもゲームの中で使っていた魔法名を言った。
『原子分解砲(アトムディザストシェル)』
詠唱はしなかった。そもそも、そのゲームに詠唱は無かったからだ、そして達也がいま言った魔法は、そのゲームに置いて最強の砲撃魔法だった。
全ての魔法を使える達也だけが使えた、最強の魔法だった。
その魔法名を言った瞬間、達也の手から
丸い魔法陣が生成され、周りから青く輝いた光が出始め、それが中心に集まると、一気に砲撃となって、レーザーのように飛んでいき、グオオ!っとクワトロサイカーの下半身から上を吹き飛ばし、そのまま青空に消えていった?
「え、、、」
ティアが驚きの表情を見せる。
(よかった、おれはティアを守れたのか、、、)
そう思った途端、身体中が痛くなり、頭がボーとしてきて、そのまま後ろに倒れてしまった。
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