第28話 厄災襲来


 ルベルーズ軍第1歩兵連隊第2大隊は奇襲の標的ではなかったという点では幸運ではあった。ただし当事者にとっては、どうやっても対処不能な災害に目をつけられていた時点で皮肉にしか聞こえないだろう。

 共和国第10番入出国ゲートから延びる街道を5㎞ほどヴァプールの森へと進んだ先に集結し、陣地構築の真っ最中であった第1大隊に合流しようとしたとき、それは起こった。

 第1大隊のうち右翼側で街道から外れた草原に火属性系統の広域爆破魔術陣を描いていた2個中隊、彼らの足元が白く染まったかと思うと緑豊かな大地に無数の亀裂が入り、裂け目から漏れだした白銀の極光に押し上げられるように膨張、ついには莫大な熱量とともに大地とその上で作業を行っていた軍人達を空へと吹き上げた。天高く放り投げられた無数の岩塊や生命体は、地下から解放された極光の中へと消えていき、瞬時に加熱された大気が渦を巻いてキノコ雲となって茜色の空へと昇っていく。

 直撃を免れた1個中隊と大隊司令部も爆発による衝撃波によって体を砕かれ、続いて襲い掛かってきた熱風によって舞い上がった肉片は瞬時に炭化してしまい、1000人近かった部隊はものの3秒で戦闘能力どころか存在ごと消滅した。

 後に残ったのは爆心地付近に出現した巨大なクレーター、その中で赤黒い熱と光を発しながらうねり、飛沫を上げる溶岩。そして、距離があったために数人の負傷者を出した以外は大きな損害を受けていない第2大隊だった。


「おい、おいおいおい…」

「ハハハッ、なんだそりゃ」


 第2大隊の最前列で自らの魔術鎧兵の部隊を先導していた2人の魔術師が、咄嗟に盾にした魔術鎧兵の隙間から視力の強化を施して前方を見やり、乾いた笑い声を漏らす。光属性魔術により裸眼でも数㎞先の光景を目の前にあるかのように観測できたが、この状況ではただ単に絶望感を煽る効果以外発揮しなかった。

 めくれ上がった大地から陽炎を伴い、ゆらりと持ち上げられた紺色を基調とした1頭の龍にも見えるナニカ。強固な装甲に包まれたひし形の断面を持つ体節が無数につながり、それらをつなげる赤黒い関節は超重量物であるはずのソレを、生理的な嫌悪すら覚えさせるほど滑らかに揺らしている。数えるのが嫌になるほど連ねられた体節の先端、ちょうど龍の頭に当たる箇所には5つの光が紫電を迸らせながら淡い光を放っていた。

 6角柱と6角錐をつなげたような魔術結晶が4つ、それも1つ1つが超大型のフォレスピオンの魔術結晶が出来損ないに見えるほど大きい。それら4つの結晶は1つずつ順番に点滅を繰り返しているため、光が時計回りに回っているように見えた。

 そして4つの結晶の中心にはそれすらも玩具に見えるような巨大な結晶が鎮座している。それ自体はほぼ透明であるが、その中には先ほど地面を吹き飛ばした極光と同じような色の光が、鬼火のようにぼんやりと浮かんでいた。


「くそっ」

「司令部に」


 彼らがその続きを口にすることは永遠になかった。

 無造作に振り上げられた尾の先端に設置された結晶のうち、小さい方の4つが同時に発光し、ギルタブリオンの体内で収束された破壊の奔流を撃ち放つ。それぞれの結晶の頂点から飛び出したビームにはわずかに角度が付けられており、4本の光条は射線上にいた2人の魔術師とその魔術鎧兵を、すぐそばを通った際に放出したわずかな熱で瞬時に蒸発させた。

 先の爆発により大隊司令部直轄の魔術結界小隊が最高硬度の魔術結界を張り巡らせ始めていたが、空間を遮ろうとしていたエーテルの障壁は、莫大なエネルギーを内包した極光を足止めすることすらできず、周囲の大気ごとねじ切られ貫通を許す。遮るものの無くなった――もともと、大隊程度に防ぎきれる魔力光ではなかったのだが――4条の火箭は第2大隊司令部が移動している隊列の中心付近で1つに交わると同時に地面に着弾する。

 膨大なエネルギーが生じた大地が震え発光し、周囲に放たれた衝撃波と熱線がルベルーズ軍の屋台骨の一つをたやすくへし折っていく。熱と衝撃波、暴風の混声合唱が過ぎ去った後には、エリクシルの表面に口を開けた2つ目のクレーターと、最初に上がったキノコ雲の後が追うように空へと上がり始めた真っ黒い雲の塊だけが残っていた。





『あーあ、何あれ。第5の使徒?アプサラスⅢ?巨神兵?インドラの矢?ユキトさん、ポケットに意味深な石とか忍ばせてません?』

「名前つけてやったら大人しくなったりしてな」


 ルベルーズ共和国の4番ゲートから北へ10㎞ほど進んだ先。なだらかな山の頂上付近で、稜線から観測カメラだけを突き出したノーマッドの車内で、夕方の空へと昇る2つのキノコ雲を確認した異星人とAIが他人事のような会話を繰り広げる。ここからでは角度の関係上どのような攻撃によって生じた現象かはわからないが、雲の規模や熱量から言って、小型の戦術核程度の威力は有りそうだった。


『まさかヴォルギン大佐がまたハッスルしちゃったんでしょうかねぇ』

「こんなところにソヴィエト産電気ネズミがいてたまるか。そんなことはどうでもいい。とにもかくにも、重要なのはあれを作り出したのがギルタブリオンで間違いないだろうってことだ」

『爆発の規模から計算すると、大隊レベルなら確実に吹き飛んでますね。何発も喰らえばルベルーズの外壁も役には立たんでしょう』

「今頃街中はパニックだろうな、中尉殿がアレをうまく使ってくれればいいが」

『どうでしょうね。まあ、なるようにしかならないでしょう』


 あっけらかんと言うノーマッドに、そりゃそうだと頷いて湯気の立つコーヒーを一口。ノーマッドがいるのは山を越える街道からそれた藪の中、光学迷彩を起動し外部カメラを伸長させ、稜線から突き出すことで観測している。索敵機器も受動式のものを除いてオフライン。道なき道を進んだハンターが偶然接触しない限りは見つからないだろう。モニターに映る光景は世紀末そのものだが、高度な科学技術は危険とともに現実味も取り除いてしまっているらしい。


「まったく、物好きな奴らよな。ギルタブリオンなんぞ捨て置けば良いじゃろ。儂らが狙われておるわけでもないんじゃし」

「そう言うな、フェネカ。これも僕らが旅をする目的の一つなんだからな」

「お主等が魔獣学者とは知らなんだ」

『自由研究レベルですけどね』


「小学生並みかよ」と突っ込みを入れるが、魔獣について解っていることが極小なことを考えると、あながち間違っていると言い切れないのも事実だった。

 魔獣と呼ばれる敵性生命体が出現したのは大災害後、そして星遺物がエリクシルに出現したのも同時期。魔術を主に据えたエリクシル系統技術とは方向性が根本から異なる、魔術を補助に据えた魔獣系統技術。魔獣が外来種であるという状況証拠はそろっている。

 つまり魔獣はエリクシルにおいて星遺物と並ぶか、それ以上の異物と考えてるべきだ、であるならば恐らくは最新の異物であるユキトとノーマッドが、多少の危険を冒してでも情報を集めようとするのは当然だった。


「なあ、ノーマッド。どう見る?」

『どうも何も、あなたと同じと思いますが?』

「ほぅ?なんじゃ、何かわかったかの?」

「解ったってわけではないが…なあフェネカ、ギルタブリオンに天敵とかいるのか?」


 ユキトの問いに、あきれたように皇女が眉を顰める。エリクシルに住む人間にとって、その答えを知らない、いや体感できないモノは存在しないといってよい。ユキトにとっては何気ない問いだったが、彼女の中ではいよいよ彼とこのビークルがこの星のモノではない確信が固まりつつあった。


「恒陽すら滅する悪魔じゃぞ?天敵どころか、他の何かに殺されたという記録すら存在せぬ。スケールⅥの化け物に敵など居らんよ。アレほどの力を持つからこそ厄災級に分類されるんじゃ」

「なら、ギルタブリオンはなぜアレほどの火力を持ったんだろうな」

「は?それは…」

「べつに天下一武闘会で優勝するためでもなし、世界を丸ごと滅ぼすためでもなし。捕食者としての能力の先鋭化と呼ぶのなら、明らかに過剰火力だ。進化の方向に無駄が多過ぎると思わないか?」

「しかし、進化とはそういうモノじゃろ?無駄なき進化など、存在せぬ。それは成長、いや生産と呼ぶべきじゃろうて」


 何処か腑に落ちないという風につぶやきのような返答が漏れる。その答えに「確かにその通りだ」と少し満足げな表情を浮かべたユキトが言葉を続ける。


「ある環境に対して様々な形態が生まれ、生き、そして死ぬ。その繰り返しの果てにに何かを残すのが進化だ。だが突然変異にも限度がある。鳶がより早く、より高く飛べる鳶を生むことはあっても、鷹を生むことはない。1世代間の変化など微々たるものさ。過剰火力を持つ後継が存在するためには、親もそれに近い能力を持っている必要がある。さて、ここで一つ質問だ。進化を繰り返し、今まで天敵だったモノに十分対抗できる能力を得た時、進化の速度はどうなると思う?」

「……止まるじゃろうな。もしくは、ゆっくりとしたものになるじゃろう。過剰な戦闘能力をもつ個体は確かに強いじゃろうが、その分のしわ寄せは別に行く。過ぎた刃を持つものは逆に淘汰されるというところかの」

『ええ、その通り。ぶっちゃけ、今の私たちにはアレを生物とみなせませんねぇ』

「なんじゃ?魔術鎧の亜種とでも言うつもりかの?」


「間違ってはないな」コーヒーを一口飲むが、そろそろ温くなり始めており、顔をしかめそうになる。カップの中に残っている量はたかが知れていると思い、一息に飲み込んだ。


「純正の野生生物というよりは、ある種の兵器と考えた方が収まりがいい。兵器の進化は生物のそれよりも急激で、革新的だ。最新技術をすべて突っ込んだら過剰火力だったなんてのは、たまに聞く話だ」


 それは、お主等の星の話じゃろ?

 喉の奥にまで上がってきた言葉を反射的に飲み込む。自分の予想に確信が持てなかったからではない。車長席のシート越しに見えるユキトの横顔に浮かぶ笑みに、得体のしれないおぞましさを感じたからだった。

 エリクシルで兵器と呼ばれるものはあくまでも魔術の補助として使われる。揺り籠の外へと活動範囲を広げさせたビークルでさえ、魔術がその根幹に据えられている。魔術の発展、もとい発掘が緩やかなものである以上兵器の進化も緩やかであるのは常識だった。

 その常識が通用しないニンゲン。映像を通してではあるが終末のような光景を目にし、声が震えないように多大な努力を払っても引きつった笑みしか浮かべられない自分とは対照的に、ユキトは見世物でも見るかのような好奇心に満ちた笑みを浮かべている。

 制御無き進化、確かにそれは急進的かつ画期的で根本的な解決策にさえ通じるのだろう。しかし、他人を殺める兵器という点において、そういった類の進化は危険極まるとしか思えない。一体全体、彼らの目には眼前の光景がどのように映っているのだろうか?


「では、あれが兵器だというのなら」


 そこまで言ったとき、外の望遠映像を映し出していたモニターが一瞬にして漂白される。薄暗い車内に慣れた目に飛び込んできた白光に思わず手をかざして光を遮り、ややあって光が収まったモニターを直視し、画面の向こうの光景に思わず絶句した。

 先ほどまでの二つの黒雲が子供に見えるほど、巨大な黒雲がルベルーズ外壁から立ち上っている。錬金術や各種の防御魔術によって強固な盾と化した外壁の一部が赤熱したナイフでえぐり取られたかのように消滅し、隣接していた市街地が粉砕され、あちこちで火の手が上がっている。外壁に林立していた防御塔も直撃を受けたらしいモノは跡形もなく吹き飛び、それを免れた塔も熱を受けてか根元から傾いたり、溶解しかかっていた。

 モニターではよくわからないが、1秒前まで大勢の人間が帰りを急いでいたはずだ。1日の終わりに酒杯を酌み交わす冒険者たちの喧騒響く大通りも、食事の香りが漂う路地裏も、帰りを急ぐ人々も、今は全て赤熱し、溶融した瓦礫のるつぼに飲み込まれてしまっている。

 この一撃でいったい何人死んだのだろうか。まだ、これがなじみの薄い他国であったからよかったものの、もしもこれが自分の祖国であったのならば、体に震えが走る程度では済まなかったかもしれない。

 さすがに、こんな光景を見てしまえば冷や汗の一つも流すだろうと、稚気なのか願いなのかわからない感情とともに車長席を振り替えるが、そこにユキトの姿はなかった。

 何処にいるのか声を掛けようとしたとき。ようやく到達した衝撃波が車体と周辺の木々を揺さぶった。




 空に昇る巨大な原子雲。なぎ倒され、赤く焼けただれた市街地。街道に焼き付いた人の影。原型を止めたまま炭化し、衝撃波で粉々に砕けた命だったモノ。モニターでは見えるはずのないものが脳裏を過ぎ去り、胸を巨大なペンチで押しつぶされていくような圧迫感にあえぐ。画面に結ばれていた焦点は当の昔に合わなくなり、ぼんやりとした風景が頭の中の記憶で塗りつぶされ、そして…


「アルマ。おい、アルマ」


 鼓膜に届いた、聞きなれた声に無理やり現実に引き戻された。

 水晶体が仕事を再開し、ぼやけていた視界が現実へと焦点を合わせた。声がした方へと視線を巡らせるが、首も眼球も酷く重く感じてしまう。普段よりも5倍ほどの時間をかけて振り向いた先には、わざわざ車体側にまで下りてきて自分をのぞき込む異星人の顔があった。肩に手が置かれているところから、少し揺さぶられたのだろう。


「大丈夫か?真っ青だぞ」

「あ、ああ…」


 答えなのか、吐息なのかわからない空気が歯の隙間から漏れた。

 心臓の鼓動が脳髄に煩く響くせいか、拍動するたびに視界がわずかに揺れているような錯覚をしてしまう。呼吸は浅く、早くなり、ジワリと脂汗が額に滲んで不快だ。

 ともすればフラッシュバックしそうになる意識を、肩をつかんだ彼の手に自分の手を重ねることで現実につなぎ止める。彼の手がひどく温かく感じてしまうのは、それほど自分の手から血の気が失せていたということだろう。今は、その熱が心地よかった。


「ヴァプールの時もそうだったが、なにかトラウマでもあるのか?」


 ちらりと彼が視線で示した先に、極力視線を向けないようにしつつ「心配ない」と零す。モニターの光景を見てしまえば、また、あの光景が脳裏を走り抜けるに決まっている。

 ユキトが自分を気遣ってくれるのは素直にうれしいが、この話題に触れてほしくない感情も多分にあった。「どう見てもそうは見えないが」と渋い顔をするユキトに「大丈夫だ」と念を押す。それが、どちらに向けて言い放った言葉のなのか、自分自身判断がつかなかった。自分がこんな醜態をさらしている理由を彼らが知れば、なんと言うだろうかと自虐的な考えが浮かんでは消えていった。

 震えそうになる体を掻き抱き、深く息を吸って吐き出す。大丈夫だ、あれは、違う。雲の形も、規模も、似通ってはいるが別物だ。アレではない。

 なんとしてでも目の前の後継と記憶を関連付けようとする脳に言い聞かせるように言葉を反芻する。そうやって、胸の中をのたうち回る罪悪感と自己嫌悪を少しずつ宥めすかしていく。そんなときだった。何度も聞いてきた精神と心が歪み、軋んでいく耳障りな音は、突然頭に感じた重みと温かさによって拭い去られた。

 反射的にうつむいていった視線を上げると、自分の肩においていた手をそのまま頭に持って行ったユキトと目が合う。ただ純粋に、その熱に身を任せて呆けてしまうこと2秒、自分が幼子のように頭をなでられているのだと気づくのに0.5秒ほど時間を要した直後、現状を理解しカッと顔全体が熱くなる。


「なっ、あ…」

「…まだ、ここから動く予定はない。モニターを切ってすこし休んでいるといい」


 抗議の声は即座に声帯に詰まり、その間に入り込んだ穏やかとも取れる声が驚くほど自然に胸へと吸い込まれていく。彼の瞳からは自分を気遣う思いしか読み取れない。ゆっくりと二度三度、頭の上を掌が往復するごとに、胸を締め付けていた重圧が解きほぐされていく。


「これは僕とノーマッドの我がままだ、君が付き合う義理はない」

「私は」

「君が何にそこまで脅えているのかは知らないが、少なくとも僕はそんな風になってるアルマを見て何も思わない人間じゃない。だから、無理はしないでくれ。奴の解析は、ノーマッドがいれば事足りる」

「ッ………すまん」


 ほとんど反射的に彼の厚意に甘えてしまう。否定することは簡単だ。けれど、ここまで見透かされた上でその言葉を吐くのは、如何にも馬鹿らしくて憚られるからだ。ともっともらしい理屈をつけて自分を納得させた気になる。

「謝るなよ」と苦笑したユキトの手が頭の上でポンポンと跳ね、それを最後に離れていった。それを名残惜しいと感じてしまう自分に愕然としている間に、彼は車長席に戻り、自分の周りのモニターから外部映像が切断され、待機画面に代わってしまっている。

 脱力してシートに持たれかかるころには、胸中を食い荒らしていた負の感情は彼の熱とともに消え去ってしまっていた。





 ――いや、実際やって見るとわかるけど今時ナデポはないわー

 ――ひっさしぶりに聞いたなオイ。ってか、やれって指示出したのお前じゃないか

 ――ヒロインがガクブルしてる時に慰めない主人公がいますか!?いや居ない!むしろそのまま抱きしめて押し倒しちまえば良かったんですよ!

 ――それなんてソリッドブック?

 ――R-18な展開いっても、ええんやで?

 ――ルベルーズがそうなってるからなぁ。R-18の後ろにGついてるが。

 ――城塞国家×デススティンガー♂本…だと?

 ――悍ましい思考は事象の地平面にしまってこい

 ――宇宙レベル!?


 まだ、彼女の頭を撫でた感触が手に残っている。ノーマッドの口車に乗ったのは自分だが、今考えると相当恥ずかしいことをやっていると死にたくなった。慣れないことはやるもんじゃない。ハーレム系主人公はなぜこれを自主的にできるのか、その図太さに実際にやって見て初めて気づかされる。

 まずい、ノーマッドの残念な思考に侵食されつつある。自重しなければ。


 ――でも、何時もキリっとしてる子が弱ってる姿って実際萌える…萌えない?

 ――お前のヒロイン講座は後で聞いてやるから仕事に戻るぞ。先の一撃で外壁に大穴が開いて、48本ある外壁防御塔のうち、8本が壊滅、市街地の1割が崩落した。その前の2発が攻撃なら、おそらく1個大隊程度は戦闘不能。これからどうなると思う?

 ――えー、そんなの決まり切っているじゃないですかぁ


 自律思考戦車のAIは極めて論理的に、過去の事象と照らし合わせた戦場予測を地球人へともたらした。もっとも、その答えはまったくの予定調和であり、予測というよりも予定タイムラインと呼ぶべき部類だった。


 ――ただただ、一方的な虐殺。陥落しかけの城郭で発生する事象なんて、たった一つっきりでしょう。


 モニター上では、生き残った外壁防御塔のうち、敵を射角に入れているらしい4本から蒼銀の槍が打ち出されたところだった。


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