第6話【魔王の目覚め】
「んー……寝すぎたな」
ようやく……15年かけた俺の復讐が、ようやく実ろうとしている。後は魔王さえ説得出来れば、それで、全て終わりだ。
魔王は案の定スヤスヤと寝ている。寝てる間に何処かに行かれたらどうしようかと思ったが、どうやら杞憂だったようだ。
「どうせ起きないんだろうが……おい!起きろ魔王!」
「ん〜……後100年……」
伸びてんじゃねぇか!起きる頃には俺が死んでるわ!
「仕方ない……色々準備してくるか……」
起きる気配のない魔王を置いて俺は隠れ家を後にする。
◇◆◇◆◇◆◇◆
実は俺の隠れ家はあのクソ共が納める城下町にある。街なんてものはデカくなると当然怪しい奴らも寄ってくる訳で、紛れるにはもってこいだった。
そしてそんな奴等が集まると、当然非合法なブツも出回るようになる。俺の向かう先も、そういう物を扱う店だ。
「おや、いらっしゃい。今日は?」
「ああ、今日は女じゃない。奥に用がある」
この店は表向き女を扱う店だ。顔見知りになる程度には俺も利用している。客の中には怪しげな薬を使う行為も好む奴もいる為、品揃えも豊富だ。お陰で色々と都合が良い。
「邪魔するぞ婆さん」
「おやおや、今日は何が必要だい?」
目的は魔力ブーストだ。少々体に悪いが、必要経費と割り切って必要な物を見繕っていく。
「これだけ頼む」
「なんだい、戦争でも……いや、詮索は無しだったね。……毎度あり」
余計な事を聞かないのはこういう所ならではの暗黙のルールだ。聞く事によって己の身が危うくなることもあるからな。
その後もいくつか店を周り、必要な物を見繕っていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
さて、必要な物は揃ったな。例によって例のごとく、魔王は眠りこけている。……覚悟してもらおうか。
何種類かの薬を飲み、場を整える。これだけやればいかに魔王の障壁と言えど破れるはずだ。俺は眠りを覚ますことに特化した魔法を唱えていく……。
「さぁ、目覚めろ魔王……。いい加減起きる時間だ」
魔王の身体に目覚めの魔法をかけていく。障壁は無事突破出来たようだ。
「ワシの眠りを妨げるのは誰じゃ……? なんじゃ、またお主か……」
「そうガッカリするな。目覚めの気分はどうだ?」
「サイテーじゃ。無理やり起こされて気分が良いはずがあるまい」
露骨に不満な顔をする魔王。しかし見た目が見た目だけに、威圧感は全くないな……。
「昨日は急すぎたな。まぁ、少し俺の話を聞いてくれ」
「菓子」
「ん?」
「ワシは今、機嫌が悪い。コレは菓子でも献上されんと治りそうにもないのぅ……」
ニヤニヤしながら横目で見てくる魔王。くっそ、イチイチ我儘言いやがって……。いや、我慢だ我慢……ここで機嫌を損ねては話が進まない。
「はぁー……わかった、菓子だな。買ってくるから寝るんじゃないぞ」
「良いから早う買って来い。あんまり遅いとまた寝てしまうぞ」
何だか起こす、買出しの繰り返しな気がしなくもないが、仕方ない……。ここで失敗する訳にはいかないからな。
「ふむ……存外素直に行ったの。コレは上手く使えば良い思いが出来そうじゃのう。クフフ……」
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