中編

 ぴくり、と眉が動いた。


「……お前、それを本当に思っているのか?」

「うん、そうとしか考えられないもん」

「……はー、分かった。お前が馬鹿であることはよーく分かった」

「何だかそこは分かって欲しくなかったかな!?」

「ついてこい」

「え?」

「その子を宇宙に帰したいのだろう。だったら、さっさとついてこい」

「う、うん!」


 そうして彼と少女は、小屋の奥へと向かうのだった。

 小屋の奥は、屋根が高い空間になっていた。

 そしてその中心には――大きなロケットがあった。


「うわあ……」

「なあ、少年よ。聞いたことは無いか。数百年だか数十年だか一度、織り姫は彦星に会いに行くはずだったのに間違えて落ちてしまった、って言い伝え」

「あー、聞いたことはあるかも。でも、それが?」

「それを実際に成し遂げたのは、儂なんだよ」

「え、ええ?」

「そのときも、ロケット技師がいてな。なんとかなった。そしてそのロケット技師は言ったよ。天の川から落ちてくるとちょうどこの位置に落ちてくるのだと。だから、儂は被害者を出さないためにもロケット技師になった。ロケットを飛ばさないロケット技師として変わり者扱いされているがな。話は逆だ。ロケットを飛ばさなくて良い状況がずっと続いてきたんだ」

「ロケットを飛ばさなくて良い理由?」

「だって、人間が宇宙を目指さなければロケットを飛ばす必要は無いだろう?」


 ロケット技師は言った。


「……このために何とか作っていたロケットを、漸く使う時がやってきた」


 そこにあった大きなロケット。

 それは彼女のために用意されたロケットだった。


「そうじゃ。これさえ使えば天の川までひとっ飛びだ。どうして織り姫が落ちてくるのかはまったく知らないが、それでもこれさえあればなんとかなる」

「あれ?」

「んん?」


 さっきまで居たはずの少女が、どこかに消えてしまった。

 それに気づいた彼らは、急いで探し始めるのだった。

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