落ちてきた織り姫と僕らのロケット
巫夏希
前編
それは、ある一夏の思い出。
「空から女の子が降ってきた?」
小島のロケット技師である変わり者のおじいさんは言った。
それを聞いて、少年はうんと頷く。
少年の隣には、気弱そうな少女が立っていた。
「……とにかく、立ち話で聞くのも何だ。いいから入れ」
「じゃあ、信じてくれるの!?」
「話を聞いてから、だ」
そう聞いて、少年と少女は中へと入っていった。
部屋の中は汚かった。元々外もいろんな資材を継ぎ接ぎしている状態だが、それに合致する汚さだった。虫が湧いていないのが珍しいぐらい。
ソファに腰掛けて、サングラスを外す。
「……で、もっと話を聞かせろ。なんで、空から女の子が落ちてきたのか。そして、お前がどうしてその女の子と一緒に居るか、だ」
「うん。それなんだけれど、」
そうして、彼は話を始めた。
彼の話によると、仲の良い友達四人と遊んでいたところ、誰かがこっちに向かってくる彗星を目の当たりにしたらしい。普通なら逃げるか警察に連絡するかのどちらかかもしれないが、彼らはそれをしなかった。ただ、待っていただけだった。
そして、彼らの目の前に、不時着したのが小さい球体型の何かだった。
誰が触って確かめるかなんてことを話している内に、中から扉が開いた。
そしてそこから出てきたのが――。
「そいつってことか」
角砂糖を噛んでいる少女を指さす。
「それは噛むもんじゃねえって前に伝えなかったか?」
少女はそれを聞いても、なお角砂糖を噛んでいる。
「それで? こいつをどうしたいんだ」
「それで、この島の七不思議! 知ってるでしょう?」
「……ああ、知っているとも」
そうして老人は七不思議の六つ目までをさらさらと述べて、そして最後の一つを言った。
「……この島は天の川に一番近い島だ。隕石の落下数が多いのもそれが原因。だが、それはあくまで七不思議の一つで、」
「だから思ったんだよ! この子、織り姫なんじゃあないかな」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます