第2章《幕末編》

3話🍃屯所に来ました

『絃羽、大丈夫か?』


一君に呼ばれ、目を開けると

新撰組の屯所の前だった。


『私は大丈夫です。一君は?』


聞き返しながら頭の中を整理する。


『大丈夫だ』


よかった。


『どうやら、戻って来たみたいだな』


やっぱり……


幕末に来ちゃったんだ。


『どれくらいの時間が経ってますかね?』


むこうでは二・三日だった。


『屯所に入ればわかるだろう』


確かにそうだけど、

私は現代の格好のままだ。


『私、洋服ですけど大丈夫でしょか?』


『近藤さん達が

信じるかはわからないが、

事実を話すしかないだろう』


それもそうか。


『何があっても守るから

俺の許嫁になってほしい』


一君……


『わかりました。


改めて、よろしくお願いしますね』


婚約者ってことだよね//////


話しが纏まったところで屯所の扉が開いた。


「斎藤!?」


そこに居たのは

新撰組・局長の近藤さんだった。


『ただいま、戻りました』


一君に倣って私もお辞儀をした。


『一君の許嫁で朝代絃羽と申します』


「“一君”とはまた

可愛らしい呼ばれ方だな」


やっちゃった↓↓


『彼女だけに許した呼び方ですから』


嬉しいな♡


「絃羽さんとお呼びしても?」


ゎゎゎ‼


年上の人に丁寧に

話されるのは居たたまれない。


『呼び捨てで構いません。


私は近藤さん達よりも年下ですから』


現代だろうと幕末だろうと

私の歳が変わるわけじゃない。


「わかた。


それはともかく

絃羽は不思議の格好をしているな」


まぁ、洋服だもんね。


『あの、近藤さん

おかしな事をお訊きしますが

今日は何年の何月何日でしょか?』


近藤さんの格好からして

夏は過ぎてると思った。


「元治二年二月十日だ」


山南さんの脱走まであと十日!?


夏は過ぎてるとは思ったけど

そんなに経ってたなんて……


『わかりました、ありがとうございます』


一君と一緒に屯所に入り

近藤さんは自分の部屋に連れて来てくれた。


そこにいたのは

一君以外の組長、局長の皆だった。


偶然なんだろうけど凄いタイミングだ(苦笑)


「斎藤!?」


最初に声をあげたのは誰か……


「ほら、二人とも座ったらどうだ」


近藤さんに促され一君の隣に座った。


「おかえり斎藤」


永倉さんが言った。


「そちらの女性は?」


沖田さんが訪ねて来た。


そう思うよね。


ましてや、私は“洋服”だし。


『許嫁だ』


一言で終わらすところが

如何にも一君らしい(苦笑)


『皆さんが信じてくださるかは

分かりませんが、

私は

人間ではありません。


百五十年後から来ました……』


それから、全てを話した。


※一君が何らかの原因で

現代未来に来てしまい、

二・三日入院していたこと。


※退院後の行き先を考えながら

歩いていたら事故に遭い

幕末こっち

来てしまったこと

を話した。


目下の目的は山南さんの脱走だよね……


新撰組の中では一君が一番好きだし、

今は許嫁だけど、他の皆だって好きだった。


だから、山南さんにだって

できれば切腹なんてして欲しくない。


どうしたものか……


「絃羽、何かあるなら言ってみろ」


流石、局長。


よく、見ている。


そして、私を信じてくれたという証拠。


『十日後の二月二十日に

山南さんは手紙を置いて

屯所ここを出て行ってしまいます。


そして、見つけて連れ戻し、

介錯かいしゃくをするのは

沖田さんなんです……』


本人を目の前に残酷なことを

言っているのはわかっているけど、

これが未来で習ったことだ。


私が震えていることに気付いている

一君はギュッと抱き締めてくれた。


仲間の介錯なんて誰だってしたくない。


例え、掟を破ったのだとしても……


後年まで、温厚だと言われていた

山南さんは“仏の副長”と

未来でも言われていた。


『お願いします。


山南さんの脱走を

阻止することに協力して欲しいんです‼』


沖田さんだって試衛館時代から

一緒だった山南さんの

介錯なんて嫌だろうし、

資料によれば、沖田さんや近藤さんは

できれば、自分たちに

見つかって欲しくなかったとあった。


立場上、脱走したら

追いかけなくてはならないが

逃がしてあげたい気持ちもあったんだ。


なら、追いかけなくていいように、

沖田さんが介錯なんてしなくていいように

山南さんの脱走を阻止するしかない。


『あんな穏やかで優しい人が

脱走なんてするのか?』


一君の言いたいことはわかる。


『体が弱ってしまったことと

伊藤さんが来て、

総長にされてしまったことで

自分が新撰組にいる価値が

わからなくなってしまい

衝動的に

脱走してしまったみたいです』


だからと言って、

藤堂さんが悪いわけじゃない。


『なら、山南さんを

説得するしかないだろう』


だよね……


『近藤さん、どう思われるますか?』


局長の意見は大切だ。


「そうだな。


十日もあるなら説得してみよう」


他の皆も納得してくれたようでよかった。


私の部屋は空き部屋を用意してくれた。


山南さんの説得は明日以降となった。


「絃羽は幕末こっち

来たばかりだから、斎藤に

江戸の町を案内してもらうといい」


洋服だけど、まぁいいか(笑)


『そうですね。


二人で散歩して来ます』


見回りも兼ねているんだろうな……


三十分程、散歩して屯所に戻った。

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