2話🍃運命は自分の手で切り開け

一side


目が覚めた時には

彼女はそこにいた。


揺すると眠そうに

目を擦りながら起きた。


『目が覚めたんですね』


心底、安心したように言われた。


『此処は?』


『病院です』


回りを見渡すと

不思議な所に寝ていた。


『此処は江戸じゃないな?』


何となく、そんな気がした。


『お察しの通り、

此処は斎藤さんが

生きていた

時代ではありません』


やはりな。


※此処は百五十年後の

未来だということ


※倒れていた俺を

見つけて病院に運んだこと


※両親とは折り合いが合わないこと


※ 彼女が恋人のふりをしたこと


『そうか、恋仲ならば

名前で呼ばなくてはな』


彼女に合わせることにした。


『そうですね。


私は朝代絃羽 といいます』


彼女に倣って、自己紹介した。


『新撰組・三番組組長・斎藤一だ』


先程、寝てしまったせいか

完全に目が冴えている。


『一君と呼んでいいですか?』


『構わない』


俺が了承すると絃羽は

嬉しそうに笑った。


絃羽が厠に行ってくると

言って病室を出て行き、

戻ってくると家族に

“メール”ようは文なのだが

それを送っていたと言う。


絃羽が見せてくれた

この時代の器械。


『この小さい器械で

遠くにいる人と話ができたり、

手紙を送ることもできるんです』


時代は進歩しているのだな。


何日もかけて

文が届くのを

待つ必要がなくなるのか……


今頃、帰って来ない

俺を探して、

てんてこ舞いだろうな。


『一君、訊いてもいいですか?』


何をだろうか?


『答えられることなら』


『こっちに来る前は

どんな出来事がありましまか?』


そういうことか。


『池田屋騒動は終わった後だな』


俺がそう伝えると

絃羽は悲しそうな表情をした。


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絃羽side


ということは、永倉さんと

藤堂さんは怪我をして、

沖田さんが喀血した後か。


伊東さんが来れば

新撰組がバラバラになってしまう。


ぁ、でも間者役の一君が

こっちに来てしまったから

代役は誰だろう?


向こうに行く手立てはないから

確かめようがないよね……


池田屋事件の後に

色々起きるのを知っている。


奥沢さんが戦死するし、

残党狩りにも奔走する


今の時代は私には残酷だ。


いや、正確には

“時代” じゃなく“あの家”がだ。


向こうにいけたら……


そんなことを思ったからなのか、

まさか、本当に向こうに

行くことになるとは……(苦笑)


一君が入院して二日経った。


タイムスリップしてきた一君は

当然、家がない。


退院後、どうするか考えなが

横断歩道を歩いていたら

右折してきたトラックに二人でぶつかられ、

その瞬間、私達を淡い光が包み込んだ。


現代編END

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